じめじめとした梅雨ももうすぐ終わり、夏休みがやってきますね。しかし、子どもが犠牲になる事故・事件のあまりの多さに、のびのびと自由にさせられない歯がゆさを感じています。さらに先日は、2歳児を縛って殴り死なせたとして逮捕された母親と叔父が、「しつけとはこういうものだと思っていた」と供述しているとの報道がありました。育児中の親世代の孤独や、大人になりきれていない幼児性を感じたのは私だけではないでしょう。幼児虐待だけでなく、最近の親殺し・子殺し事件の多さに、豊かなはずの日本の家庭で心のすれ違いが起きている気がするのです。
「ほとんどの親が、子どもを自分のこと以上に愛しているのに、問題のあるほとんどの子は、親から愛されていると思っていない」このことに気づき、親教育の専門家エリザベス・クレアリー氏とともに『子どもに愛を伝える方法』(築地書館)を著したのが田上時子氏です。氏は、相手の望まない方法でいくら伝えても愛は伝わらないこと、相手の望む愛の伝え方で愛を与え、望まないものは与えない、という原則があることを教えてくれています。
そういえば、私の両親は長期休みのたびに旅行に連れていってくれました。それが愛の表現だったのでしょう。ところが私も妹も、スケジュールに追われる家族旅行より、ふだんもっと優しい言葉をかけてくれること、もっとそばに寄り添ってくれることを望み、寂しく感じていました。親子の間に意識のずれ、心のすれ違いがあったのですね。
田上氏は、よい親子関係を築くにはお互いの違いを認め合って歩み寄るしかないが、親子の場合はもともと力関係があるゆえに、力のある親のほうから子どもに歩み寄る必要があると指摘しています。親が自分のやり方に固執するのではなく、我が子に合った方法を見出し実践していくということなのでしょう。
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『子どもに愛を伝える方法』 (築地書館) |