秋はもうそこまで来ているのでしょうが、まだまだ寝苦しい夜が続きます。先日、ある保育所で保育士さんから、こんな話を聞きました。ある日、2歳児の子のお母さんが「子どもが夜、なかなか寝ないので、うちの子だけお昼寝をさせないでほしい」と言ってきたそうです。「なかなか寝ないって、随分遅くまで起きているのですか」と聞いてみると、「帰って、ご飯を食べさせて、お風呂に入れたら、すぐ寝てくれないと私が困るんです」との答え。
保育士さんは、「寝る前に少し背中をトントンとたたいてやるとか、絵本を読んだりしてみては」とアドバイスしてみたのですが、「そんなことは忙しくてできない」と、全く聞く耳を持ってもらえなかったそうです。そのお母さんの気持ちも理解できます。やっとの思いで子どもを寝かしつけた後に待っている、汚れた食器や取り入れた洗濯物の山。夜な夜なそれを片づけることを考えると、「早く寝て!」と叫んでしまいたくなることもあるでしょう。
『いそがしいっていわないで』(カール・ノラック/文、クロード・デュボワ/絵、河野万里子/訳、ほるぷ出版)の小さなハムスター・ロラは、忙しい両親に振り向いてもらおうと、あの手この手を考えます。疲れ切った両親は、ロラの相手になる余裕なんてありません。でも、最後にロラは、パパとママが元気になる「まほう」を自分で見つけ出し、皆を優しい気持ちで包み込みます。そして、その優しい空気の中で、ロラは安らかに眠ります。
子どもはロボットじゃありません。夜になったらスイッチを切って、勝手にストン、なんてわけにはいきません。目をつぶっても眠れないときには、お父さんやお母さんに、その日1日にあったいろいろな出来事を聞いてもらったり、お気に入りの絵本を読んでもらったりして、やっと安心して夜の暗闇に身を置くことができるのかもしれません。汚れたお皿や洗濯物に気をとられている間に、私たちはたくさんの「ステキなまほう」にかかり損なっているのではないでしょうか。
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