私の絵本体験記
「絵本フォーラム」48号(2006年09.10)より
「子どもとともに」
吉田幸宏さん(山形県山形市)

 子どもが成長し、本を欲しがるようになった。実に20余年ぶりに「絵本」を手にした。本当にさまざまな「絵本」がある。背表紙を読むと、すべてがひらがなで書かれており、パッと見ただけでは頭の中に印象が湧かない。
 それでも、『ももたろう』や『ぐりとぐら』、そして昔大好きだった『三びきのやぎのがらがらどん』は簡単に探すことができた。ついつい手に取り、読んでとせがむ子どもをよそに、物語に誘われていってしまった。

  時折、ベッドの中で子どもに「絵本」を読んであげる。2歳と4歳の子どもがいるが、「自分の好きな本を持っておいで」と言うと、不思議なもので、年相応の「絵本」を持ってくる。
  両脇の子どもは、自分の持ってきた本を本当に一生懸命に聞いている。そして、教えずともその本の主人公になって、物語を体験しているようだ。

  子どもに読み聞かせる以前は、声を出して本を読むという機会はほとんどなかった。初めは自分の子どもの前でさえも恥ずかしかったが、ようやく少しは登場人物に合わせて声を出せるようになってきた。もちろん自己満足の世界だが、まだまだ成長できることに気づき、とても感謝している。

  日ごろの仕事に追われる中、子どもと同じ時間を「絵本」とともに過ごすことで、心が癒され、また、モラルを考えさせることができる。子どもが嫌だと言うまでは、この時間をともに過ごしたいと思う。

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