リレー

父親三景
(山口・NPO法人「絵本で子育て」センター絵本講師・天野 美佐子)


 私たちが小さかった頃にくらべ、保護者の方は教育熱心で、明石市内二十八の公立幼稚園でも「絵本ママ」の活動で保護者の方が読み聞かせをしたり、絵本の貸出しに積極的だったりします。近年、世の中が忙しすぎて子どもたちもワクワクドキドキする余裕がなくなっているので、絵本を通しての活動は子どもたちの心を豊かにします。

 3学期、林幼稚園では各クラスごとに生活発表会(劇遊び)をしました。4歳児クラスでは「からすのパンやさん」 ( かこさとし作 ) をしました。昨春、園庭のクスノキにカラスが巣をつくり、そこから取り上げました。絵本の世界を友だちとの劇遊びに展開することでお話がより印象に残り、子どもたちはカラスの泣き声を聞いたり夕焼け空を見たりするたびに絵本を読んでもらった先生のことカラスになって遊んだクラスの仲間のことを思い出すことでしょう。

 担任が出張時のピンチヒッターとして私が保育室に入る時、まずは子どもたちとのコンタクトを摂ろうと一人一人に声をかけます。そんな中、小さな声で「園長先生、怖い話してな」という子。早速、「注文の多い料理店」 ( 宮沢賢治作 ) を素話でしました。山猫と言う言葉の響きがスリリングだったり、繰り返しのなかでワクワク感が高まったりしていくようです。次回、違うクラスに行っても「怖い話がいい」と言う声が多かったり ( 子どもたちの情報? ) 保護者の方から怖い話の正体を質問されたりすることもあります。

 絵本の読み聞かせをする時、絵本そのものの魅力プラスその場の雰囲気や周りの仲間や読み手のかもし出す全てのものが子どもたちに影響し感動となって残ります。慌しい世の中ですが、これからも子どもたちが絵本を通し心やさしく健やかに育っていくことを願っています

絵本フォーラム51号(2007年03.10)より

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