リレー

目に見えない心を育てる絵本
( 青森・是川保育園保育士・李澤 道代 )


 私の勤めている保育園には、テレビもビデオもありません。そのかわりにたくさんの絵本があり、朝に夕に先生から読んでもらうのが何よりの楽しみであり、ホッとするひと時になっています。読み始めるとじっと耳を傾け目を輝かせるその表情は、それぞれのイメージや思いが膨らんでいるのを感じさせとても素敵です。

 私は未満児クラスを担任していますが、子どもたちのリクエスト絵本はめだかコースの中にある『どんどこももんちゃん』(とよたかずひこ/さく、童心社)です。小さいももんちゃんが山越え熊もやっつけ涙をこらえてひたすらどんどこ走って行く。最後にどーんと飛んでお母さんに抱きついてにっこり笑うラストページ——。このページには文字がないのですが、私がそっと子どもたちを見ると「ママだ」「母さんだよ」と自分の母と重ね合わせホッとした表情をするのです。保育園で楽しそうに過ごしているものの、絵本の中で母の温もりを思いお迎えを待っているんだなぁと思うとますます子どもたちが愛しくなり、母の存在が生活の中で大きいことを改めて感じます。

 メディアの騒音に囲まれている子どもたちを保育園の生活の中で大切に守り感性豊かな優しい子に育てたいと願っています。人と関わり生きていく上で大切な目に見えない心をどう育てるのか保育士として考えた時、テレビやビデオのない保育園・幼稚園が増え、絵本を読んであげる優しい大人が多くなることを願いたいと思います。子どもたちが大きくなった時、絵本を読んでもらった原風景が残りますように……。

絵本フォーラム53号(2007年07.10)より

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