リレー

「 おおきな たのしみ
(山形・プチハウス主任保育士 ・菊地 京子 )


 
 私自身の絵本との出会いの記憶は、おそらく母親が買ってくれた単純なお話絵本だったように思う。今の時代のように、優れた絵本が身近にある時代ではなかった。その代わり、偉人の伝記、坪田譲治童話集、アンデルセン童話集など与えられ、繰り返し、繰り返し読んだ記憶がある。文字から得たお話のイメージが、高校の頃から絵本の世界へとつながり、少ないお小遣いで自分のために絵本を買い始めた。山形市の、絵本がたくさん置いてある大きな本屋に行くことが、最高の楽しみだった。就職して何が一番嬉しかったかというと、「ああ、これで好きなだけ絵本が買える」と思ったことである。

 3人の子育てをしている時期も、私は絵本を子どもと一緒に存分に楽しんだ。もちろん、保育園でも子どもたちに絵本を読んであげる時間は、自分自身にとっても最高の楽しい時間である。赤羽末吉の昔話、滝平二郎の切り絵、林明子の子どもの表情、海外の絵本の深く微妙な色遣い……言葉以上に語りかけてくる。また、絵本をとおして感じる様々な感情……嬉しさ、喜び、誇り、強さ、弱さ、寂しさ、悲しみ、怒り、畏れ、など子どもたちと共有できることは、保育者である私自身の至福の時である。

 今、子どもたちの周りにはたくさんの楽しみや玩具があふれているが、絵本という存在を心の中に伝え、響かせていきたいと考え、これからもずっと絵本に関わっていきたい。

絵本フォーラム53号(2007年07.10)より

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