わが家のベランダから見える公園には、見上げんばかりの大イチョウの木立があります。
4月半ばに芽吹いた葉を揺らす梢は、夏の間涼しい木陰を作ってくれました。これからの季節には、落ち葉が辺り一面に黄色いじゅうたんを敷き詰めてくれることでしょう。
すてきなお話を伺いました。知人が家族で六甲山へハイキングに出掛けたとき、3歳になったばかりの息子さんが「ぼく、のぼっちゃう」と太い木の幹にしがみついたそうです。
突然の行動に一同唖然! しかし、お母さんはピンときたのです。 2・3週間前、読み聞かせ会で読んでもらった絵本『のぼっちゃう』(八木田宜子/さく・太田大八/え・文化出版局)のことだと。
そして、絵本の場面を思い起こして「そうだね、のぼっちゃうねぇ」と見守ったそうです。きっと男の子は木にしがみつきながら、心の中では東京タワーより高く登って、木の上から飛行機に手を振っていたことでしょう。
幼い子ども時代に空高く飛ぶ飛行機を見上げ、乗りたいなぁ、どうやって乗るのかなぁと、あれこれ思いをめぐらしたことを私は思い出しました。子どもは限りない空想の世界を持っていることを、絵本は私たち大人に気付かせてくれるのです。
さらに、子どもの空想の芽を摘み取ることなく、見守ってやるのが大人の務めだということにも気付かせてくれるのです。 |