絵本のちから 過本の可能性
「絵本フォーラム」60号・2008.09.10

はばたきの会・特別企画
梅田俊作・佳子先生と絵本を作ろう!!

池田 加津子

■池田 加津子

横浜市出身。松下電器産業株式会社東京支社秘書室勤務。結婚後、関西へ。
現在FM局でパーソナリティー、ラジオ小説の朗読、そして公的会合の司会、ナレーションなどを行っています。また、「ブックスタート」「子育てサークルどんぐり」「小学生・中学生へのおはなし会」など、「朗読ボランティア」を通して、地域のお母様、お子さんと一緒に「言葉」の大切さを次の世代に伝える活動をしています。



  「はばたきの会」 (絵本講師の会)特別企画 < 俊作先生と絵本を作ろう > が7月 27 日(日)、芦屋市民センターで開催されました。

 
この講習会は、梅田俊作先生のご厚意により、実現しました。

〈不安と期待でワクワク〉

  連日の猛暑。会場のそばを流れる芦屋川は蝉の大合唱。この日を待ちかねた子ども( 3 才〜小学校高学年)と大人 60 名あまりが、全国各地から会場の芦屋市民センターに集合しました。見るところ、みなさん、不安と期待でいっぱいの様子。なぜなら、事前準備(ストーリーを考えておく等)は、一切要らないとのこと。画用紙、折り紙、スティック固形のり、はさみ、クレパスなど。これだけの<材料>持参で本番に臨みます。

 しかし、そんな不安も俊作先生の一言で消えていきました。「さぁ、ヤクザになった気分で、切って、貼って、破って、その場で思いついたことを絵本にしよう!捨てるものはないですよ。最後まで、大切にとっておいてください」。

〈「これ、いいね。素晴らしい」〉

 俊作先生 , 佳子先生ご夫妻のご指導で、手作り絵本講習会のスタートです。はさみの入れ方、折り方で次々と表情をかえる画用紙。こうなると、子どもはすごい。自分の想い、アイデアをどんどんストーリーにしていく。まさに「柔らかあたま」である。それにひきかえ、大人のなんと「固いあたま」。なぜだろう?なかなか先へ進めない。

 俊作先生が各テーブルをまわり、一言二言アドバイス。「これいいね。素晴らしい」と、必ず声をかけてくださる。他人と比較せず、それぞれの個性を認めてくださる。気がつくと、みんなの目(大人も子どもも)が、きらきらと輝きはじめている。これだ、と思いました。この言葉がけが心に響いて、創造を促すのです。平面の画用紙が、立体的な動きをみせ、たくさんの作品ができはじめる。決まりも規制もなく、自由な発想。自由な発想が個性を際立たせる。

〈絵本の値段は100,000,000,000 円〉

 そして、最後の作業は、製本です。厚紙の表紙をつけ、寒冷紗(かんれいしゃ=目のあらい、薄地の綿布)で補強する。さあ、出来上がり!「世界にただ一冊の絵本」。俊作先生が「表紙は、まわりにある廃材でつくってみよう。タイトル書いて作者名も入れて、裏表紙に、販売金額もいれよう」とおっしゃいました。またまた、子どもたちは、うれしそうです。あるお子さんの「絵本」は、 100,000,000,000 円だそうです。思わず回りの大人は「ふふふ、印税生活ね」(これは大人の発想です)。

 テレビもラジオも、そして、ゲームの電子音もない空間。でもそこには、たくさんの言葉、たくさんのスキンシップ、たくさんの笑顔があふれていました。お母さん、お父さん、家族みんなで、何かをつくる。同じ時間を共有する。とても素敵なことですね。

〈手を使い、頭で確かめながら〉

 俊作先生が、よくおっしゃっています。子どもにとって「遊び」が必要なこと。それも泥んこ遊びのように皮膚感覚を育てる遊びが必要なこと。手を使って何かをつくりあげることが大切なこと。「ゴミだと言って捨てる前に、身の回りのいろんな物で子どもにいろんな物を作らせてやってください。そこにはその子の心の底にあるものがでてくる。世界にたったひとつしかないものです。手を使い、頭で確かめながら何かを作る。そして達成感を得る。それはとても大事な育ちの過程なのです」。

 「世界にただ一冊の飛び出す絵本」を見せながら、ストーリーを話してくれたお子さんもいました。「とっても楽しかった。夏休みの宿題できた!」と話す子も。大人は「子どもに返って、柔らかあたまにならなくては・・・」などなど。

〈笑い声があふれた一日〉

 講習会終了後、梅田俊作・佳子先生と昼食をご一緒させていただきました。みなさんの会話が途切れることなく続いていました。それぞれの傍には、「世界にただ一冊の絵本」が優しく微笑んでいます。みなさんの笑顔、笑い声があふれた一日でした。梅田俊作・佳子先生、本当にありがとうございました。

(いけだ・かずこ)


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