私の絵本体験記
「絵本フォーラム」61号(2008年11.10)より
ステキな時間、親子の宝物
山口雅美さん (福岡県福岡市)

  「これ読んで」と絵本を持ってきて「ちょっと重いよ」といいながらも私の膝の上に乗る娘も、今月で7歳の誕生日を迎えます。絵本が大好きで、最近では一人読みもするようになりました。

 私が読み聞かせを始めたのは、娘が2歳の頃。それまで、絵本を読んであげたことがありませんでした。子育ては楽しめていたけど、「絵本を読み聞かせる」という姿が私には似合わないと感じていました。そのうち仕事も始め、育児との両立。一番の悩みは、この子に愛情は足りているだろうかという不安でした。その不安から解放してくれたのは、保育園で出会った絵本。私たちの「絵本タイム」は、そこからスタートしました。一緒に過ごす時間が限られている私たちにとって、この3分〜10分は無理せず続けられ、短いけど充実した幸せなひとときで、頑なに読み聞かせを拒んでいた事もいつのまにか忘れ、この心地よくて幸せな時間を楽しんでいました。

 「まほうのえのぐ」や「わたしのワンピース」、「タンタンのぼうし」。小さい頃は色んな本を持ってきていたのが、最近では、学校で何かあった時やさみしい時には決まった本を、甘えたい時には大量に絵本を積んできます。彼女は心のサインを出す場所として「絵本タイム」を選んでくれていました。そしてこの時間が、心が通い合う時間だということを彼女はちゃんと分かっていると気づき、私の悩みであった不安もなくなり、働いていても大丈夫、この子の心を満たす事が出来ると実感し、自信へと変わりました。

 一緒に泣いたり笑ったり。たくさんの思い出が詰まった「絵本」と、親子の心を繋いでくれた「ステキな時間」は私たちの宝物です。

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