私の絵本体験記
「絵本フォーラム」61号(2008年11.10)より
「 懐かしいあの頃が、わが家の本棚に 」
都築照代 さん (鹿児島県加治木町)

 ふと今まで大切にしてきた絵本たちに会いたくなったのである。一冊一冊を手に会話してみたくなったのかもしれない。絵本だけで、六百冊ぐらいあるだろうか。転勤族で何回も転居したにもかかわらず、本だけは捨てることができないでいる。引っ越し業者に「たくさん本をお持ちですね。」と声をかけられることもしばしばある。そんな時には「そうでしょ。そうでしょ。」と荷づくりの大変さも忘れてニンマリしてしまう。最近、ゆっくりと本棚を見ることがなかったと反省しながら、絵本の世界へ・・・。

 『かおかおどんなかお』これは、長女のお気に入りだった絵本。自分の顔を指さして、絵本と同じ顔を何度も何度もしていたっけ。おしまい、さよならの顔がとってもかわいかったなあ。なんて、しっかり覚えている。『わたしのワンピース』のララランロロロンは、きっと、わが家独特の節回しなんだろうけれど・・・。今でも言うことができる。『ざっくりぶうぶうがたがたごろろ』は、長男のお気に入りだった絵本。文章を全部暗記していて、少しでも読み間違えると正確に言い直してくれたっけ。本当に懐かしい。そうそう、私が助けてもらった絵本に『かみさまからのおくりもの』がある。子どもが幼稚園に入る頃、他の子とついつい比べて、うちの子はここがダメだと、その子が持っている個性を否定してしまったりする。“がんこ”も“ゆっくり”もとても大切なことで、見方次第でプラスになるということを気付かせてくれた絵本。

 絵本で体験した共通の思いは、子どもたちが大きくなった今でも時として私を幸せにしてくれる。新しい絵本を手に入れると、「素敵なんだよ。聞いてくれない?」と忙しそうな二人に声をかける。「え−、今」と言いながら、まんざらでもない様子。「しめしめ」である。 (つづき・てるよ)

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