リレー

読み続けましょう
(佐賀・元学校図書館司書・くちい文庫主宰/久地井 壽美子)

 振り返ると人生の半分以上を幅広い年齢層の読書に係わりました。大学、高校、小学校と学校図書館の現場に加え、自宅に開いた「くちい文庫」やボランティア活動など、楽しみながら子どもの成長を自分の目で確かめる機会を持てたことは私の大きな財産になっています。子どもに係わっていると、子育て世代から相談を受けることもしばしばです。

 一番多いのは「どうしたら本を読むようになるでしょうか」と言う質問です。私の経験から言えることは、子どもは本来、本が好きであり、放っておけば子どもは本に興味を示さなくなるということです。近年、電子メディアやゲームなど子どもにとって取り付きやすいものが増えました。それは子どもの成長に危険な要素も多く含んでいます。子どもの育ちの始めに絵本との出会いをさせて欲しいと思います。体に触れ、声を聞き、絵本を一緒に楽しむ満ち足りた幼児期の体験が豊かな人生を送るための大きな原動力となります。

 「絵本の読み聞かせを重ねていたら文字を教えてないのにいつの間にかひとりで絵本が読めるようになった!」と驚かれることもあります。その時、私は「自分で読めるようになってもできるだけ読んであげてください」とお願いしています。子どもにとって、読んでもうことの中にかけがえのない意味があるからです。僅かな時間でも子どもに向き合うことは、日頃見過ごしている一面や成長ぶりに気づく大事なチャンスでもあり、読んであげることで、今までとは違う世界が広がってくるはずです。

 親が深く関わる子どもの時期はあっという間で、絵本で心を通わせた日々は珠玉の時と思う日が来るに違いありません。多くの絵本に出会うことで見る目も育ちます。本は大人のしっかりした目で選んだものを手渡したいものです。私自身、ものをしっかり見ることのできる目を持ち心には子どもを住まわせることのできる大人であり続けたいと願っています。

絵本フォーラム68号(2010年01.10)より

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