私の絵本体験記
「絵本フォーラム」69号(2010年03.10)より
「絵本は好奇心の始まり 」
河口 歩美さん (福岡県福岡市)

 「絵本と聞いて何を連想するか」そう聞かれたら私は「寝る前の読み聞かせ」と答えるでしょう。母親がきまって寝る前に絵本を読んでくれていました。それから就寝。何年続いたでしょうか。それがないと何か物足りなくて眠れない。父親はというと…本の題名を読んで「おしまい」と、なんとも子どもの好奇心を破壊する読み方でした。

  まあそれはそれで楽しく、何度もせがんでいた思い出もありますが…。世のお父様方、いくら疲れていてもこの読み方だけはやめましょう、子どもがひねくれてしまいます。
  そんな父親とは対照的に毎晩絵本を読んでくれていた母ですが、家には沢山の絵本や本があります。きっと本を集めるのが趣味、と言っても過言ではないでしょう(300冊以上あるので絵本代だけでもすごいだろうな、と小学生ながらに思っていた)。でもそのおかげで様々な体験をすることができました。絵本の中で。活字とは違って絵と組み合わせることでよりリアルに想像できたり感情移入しやすいのでは、と18歳になって改めて絵本のすごさに気づかされたのです。

  私は一番思い出に残っているのはアーノルド・ローベル作、まきたまつこ訳の『いろいろへんないろのはじまり』(冨山房)です。「よのなか なにかまちがっとる」と魔法使いの些細な疑問から始まります。あまり書くとネタばれしてしまうので詳しくは書きませんが、小学生の頃この本を読んでしばらく現実世界のどツボにハマった記憶があります。
  絵本はいつになっても思い出に残るもの。沢山の絵本を読んでくれて感受性を豊かにしてくれた母に感謝。直接は恥ずかしくて言えないのでこの場をお借りします。
  「本は心のごはん」もいろんなごはんを味わって豊かな心でいられますように。(かわぐち・あゆみ)

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