私の絵本体験記

「絵本フォーラム」76号(2011年05.10)より
ブックスタートから始まった幸せな時間
井上 嘉子さん(大阪府高槻市)


 子どもが生まれるまでは、一人で楽しんでいた絵本の世界でした。絵本は大好きでしたのに、いざ自分の子に読むとなると毎日の育児に忙殺され、絵本を読み聞かせるという少しの時間も心のゆとりも持てずに過ごす日々でした。

そんな時、子どもの検診で訪れた保健センターで一冊の絵本を手に取ることになりました。それは市が行なっているブックスタートの絵本で、 3 冊の中から好きな 1 冊を持ち帰ってもよいというものでした。私と息子は、『おつきさま こんばんは』(林明子 / 作、福音館書店)を選び、持ち帰りました。

その日以来、この絵本は息子の良き親友となったようで、夜、外で絵本と同じような場面に出くわすと、「あっ!おつきさまが、くもさんとおはなししてるんかなあ…」、と度々月のことを気にかけるようになりました。これがきっかけだったのでしょうか、それからはいろいろな絵本を親子で楽しむようにもなりました。

『もこもこもこ』(谷川俊太郎 / さく、元永定正 / え、文研出版)の読み聞かせをした時は、親子の会話が「もこ」といえば「もこもこ」と答える言葉遊びのような感じになったこともあります。

また、私自身が子どもの頃読んでもらって大好きだった『おやすみなさい フランシス』(ラッセル・ホーバン / 文、ガース・ウイリアムス / 絵、まつおかきょうこ / 訳、福音館書店)の時は、すっかり主人公のフランシスの気持ちになり、お話しに入り込んでいました。そして、「この本ママも好きだったの?僕も大好きだよ!」と私の好きは息子にも伝わったようでした。「おつきさま こんばんは」から始まった私と息子の絵本との出会いは、今、また新たな方向へと向かっています。

「おつきさま」好きが高じてでしょうか。今、息子は天体に興味があり、宇宙の神秘に心躍らせています。これから息子がどんな絵本と出会っていくのかが楽しいです。 (いのうえ・よしこ)

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