私の絵本体験記

「絵本フォーラム」77号(2011年07.10)より
「心の中でちゃんと聞いているよ」
永尾 美花さん(兵庫県芦屋市)


 「にんじんのたねをまきました。め なんかでっこないよ」、台所でご飯の支度をしていたら、二才の娘が『にんじんのたね』という絵本をめくりながらひとりぶつぶつとつぶやいていました。

 思わず、その姿に主人と顔を見合わせて驚きとともに微笑んでしまいました。
  娘に絵本を読みきかせをはじめたのは、生後4ヶ月になったころです。友人から出産のお祝いで絵本をいただいたのがきっかけでした。親の意気込みとは裏腹に、絵本を舐め回してポイ。ビリビリ破ってポイ。絵本はおもちゃのひとつでした。  二才になっても、2〜3ページ読んだところで、絵本をパタンと閉じて、「お〜しまい!」といった感じ。なかなか最後まで聞いてくれないので、(絵本は好きじゃないのかなぁ …)と思っていました。

 そんな時に、市民講座での絵本講座を受講しました。講師のかたに子どもが最後まで聞いてくれないことを相談しました。「聞いてないように見えても、心の中でちゃんと聞いているよ」と、心強いアドバイスをいただきました。
  それからは最後まで聞いてくれなくてもオッケー。親子で楽しもうと思うようになりました。そして、ほそぼそと続けた結果、娘の心の中には、絵本の世界が広がっていたのです。絵本の読み聞かせの底力を、強く感じました。子供の成長とともに、増えていく絵本を見つめ、幸せを感じる今日この頃です。

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