私の絵本体験記

「絵本フォーラム」80号(2012年01.10)より
意識を共有しあえば、体と心で感じられる
川口 結実さん(東京都世田谷区)


 我が家の娘たちは、5歳差の姉妹です。一時期、子育てについて壁にぶつかった経験があったのですが、その時に助けてくれたのが数かずの絵本体験でした。その中から、絵本にまつわるエピソードを1つ、お話します。
 こいでやすこさんの『もりのひなまつり』、娘たちがとても大好きな絵本で、桃の節句が近づくと必ずこの絵本の話題が出ます。

 ある日、留守を頼み出かけた先、書店でふと手にとまった『おなべおなべにえたかな』。こちらもこぐれひでこさんの絵本です。子どもたちへのおみやげに購入し、2人の喜ぶ顔を思い浮かべながら帰宅しました。「今日はこんな絵本買ってきたよー」と手渡すと、次女が表紙を見た途端、目を丸くしています。なんでだろう?保育園で読んだことがあるのかな?そんな矢先、次女がだだだだーっと本棚にダッシュしていくではありませんか。そして、一冊の絵本を持って、再びダッシュで私の所に戻ってきました。なんと彼女は『のはらのひなまつり』を持ってきたのです。次女の頭の中で、二つの点と点が一本の線で繋がったのですね。娘が自分自身で掴んだ体験を目の当たりにし、胸が熱くなりました。

 そのときに、悩んでいたことがとてもちっぽけに思えました。育児は頭でっかちになると、途端に窮屈になるもの。子どもたちと意識を共有しあえることができれば、自然と体と心で感じられるんだなと実感しました。絵本には本当に助けてもらっています。(かわぐち・ゆみ)

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