私の絵本体験記

「絵本フォーラム」81号(2012年03.10)より
絵本に遊ぶあたたかな時間
 宮原 美奈さん(兵庫県加古川市)


「トントントン。あけておくれ、こどもたち。おかあさんだよ」「あけないよ。おかあさんじゃないもん。(中略)おまえはきっと おおかみだろ!」
 今日もまたごっこ遊びの始まりです。娘4才、息子が1才。
私達はそれまで以上にお話ごっこを楽しむようになっていました。
 幼稚園から戻った娘と、姉についてまわる弟。二人の仕草や表情、声に笑顔は心を和ませます。二人はいっちゃんからななちゃん(末の子やぎ)まで順に名付けては、どの子やぎにもなりたがりましたし、そのものでした。
 さあ大変! おおかみがやって来ました。見つからないよう、転ばぬよう、一所懸命隠れる姉弟。よちよち歩きの息子は時々頭をぶつけて姉は労り、どこへ隠れよう…。テーブルの下かカーテンの後ろか、はたまたおもちゃ箱の陰か本棚の隣か……。そのうち一ぴき見つかってしまいました。ママおおかみは、「なんて可愛い子やぎだろう。ほっぺもお耳もおててもあんよも可愛いなぁ。食べちゃうぞ。まずは、むぎゅぅ〜だ!」すると、襖の向こうからもう一ぴきの子やぎが勢いよく飛び出してきて、「ママぁー」。「あら、無事だったのね!よかったわぁ。さぁ可愛い子やぎちゃん、むぎゅぅ〜よっ」。
 この春、子ども達は6年生と3年生に。今では、宿題の本読みをまるで絵本でも楽しむかのように親子で共にすることもあります。
 二人の音読に耳を傾けていますと、成長を肌で感じます。声の中にも姿にも。そして今日もまた、絵本の思い出が心の扉をノックしています。トン、トン。トントントン……と。(みやはら・みな)

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