私の絵本体験記

「絵本フォーラム」86号(2013年01.10)より
絵本を開けばあふれ出す宝物
熊懐 賀代さん(兵庫県芦屋市)

 この秋、長男が12歳の誕生日を迎えました。初めての赤ちゃんとどきどきの毎日を過ごしていたのはついこの前のような気がするのに何て早いのでしょう!
 我が家の最初の赤ちゃん絵本は、長男の出産祝いにいただいた『松谷みよ子あかちゃんの本』(童心社)のセットでした。気候のよい時には、赤ちゃんを膝に抱いてベランダに腰を下ろして読みました。空も風もとても気持ちよく、私は絵本を読むだけでなく極自然に赤ちゃんにいろいろと話しかけておりました。初めは独り言みたい……と思っていたのが、息子は赤ちゃんなりにいろいろな表情を見せてくれるようになり、すぐに平気になりました。
 長男が自分で遊べるようになると、一番活躍したのが『のせてのせて』(松谷みよ子/文、東光寺啓/絵、童心社)。家事をする私の足もとで、お気に入りのおもちゃのバスを走らせて遊びました。椅子もテーブルもトンネルになりました。
 成長につれて絵本の世界もぐんぐん広がり、毎年五月になると『ツバメのツッピとピッチ』(中島和子/文、高橋透/絵、ひかりのくに)のお話を読んでは外を歩く道々ツバメの巣を見上げ、下の子の誕生の時には、長男に新しい家族を喜んで迎えてほしい一心でたくさんの絵本を選んでは一緒に読みました。
 それぞれの絵本に子ども達のあの時の表情がそのままよみがえります。あんなに可愛かった、そしてこんなに大きくなったと思うのもまた愛しくて、ぎゅっと抱きしめたくなります。
 自分の仕事のために子ども達を急かしてしまったり反省も山ほどあるけれど、一緒に過ごしてきた時間のすべてが私の宝物です。素敵な時間をよりいっそう素敵にしてくれた絵本たち、どうもありがとう。これからも、よろしくね。(くまだき・かよ)

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