私の絵本体験記

「絵本フォーラム」92号(2014年01.10)より
絵本で旅を楽しむ
斉藤 和江さん(栃木県下都賀郡)


 我が子は重い心臓病で長い入院生活を強いられた幼少期を過ごしました。退院出来た後も、規制が厳しく子どもならではの楽しみを味あわせてあげることが出来ない毎日でした。そんななか、子どもと私の心を救ってくれたのは「絵本」でした。
  外に出ることも、外気に触れることさえも出来ない我が子が知る外の世界。それはとても雄大で美しく、限りない自由と楽しさをあたえてくれました。そして、深い霧でこもりそうだった子どもと私の心を綺麗に晴らしてくれたのでした。
 絵本のなかの物語で子どもと私は沢山の旅をしました。楽しい旅、ドキドキする旅、ちょっぴり悲しい旅。様々な旅を楽しみ、心の栄養とし、夢と希望を貰い、大いに空想と想像の旅行を楽しみました。
 あれから十年以上経ちますが、今も絵本が大好きで、病気と闘いながら絵本旅行を親子で楽しんでいます。現実ではありえないことも、心のなかでは自由に叶えられる素敵な世界。小さな子どもの心に栄養と糧を与えてくれる絵本。この絵本たちのお陰で、辛い時期も、楽しみを見つけて過ごしてこられました。沢山の言葉のシャワーを浴びて育った子どもは、知的ハンディもありますが、発想豊かで沢山の語彙力を持ち、自分の気持ちを伝えることが出来るようになりました。
 これからも私たち親子は、絵本が織りなす素敵な旅を楽しみとして続けることでしょう。(さいとう・かずえ)

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