絵本のちから 過本の可能性

「絵本フォーラム」94号・2014.05.10

『絵本講師・養成講座』を受講して
—— 「絵本講師・養成講座」からの贈り物  ——

岩本 美和(芦屋10期)

岩本 美和 とてつもない達成感でした!! 修了証書を手にした瞬間、「頑張ったね」という自分への褒め言葉が自然と胸の内に湧き上がりました。「絵本とは何か?」ということにとことん向き合った1年間、「絵本講師・養成講座」は、生涯にわたって私を支えるであろうすばらしい贈り物をたくさん手渡してくれました。

 開講式の日、松居直さんのご講演に眩暈がするほど感動し、帰りの電車に揺られながら、松居さんからいただいた言葉を反芻しては感嘆の溜息をついていたことを思い出します。私にとって「絵本講師・養成講座」はそんな衝撃的な始まりでした。松居さんは、「声の言葉はその人の気持ちを伝える」とおっしゃいました。その言葉のとおり、松居さんの絵本に対する思いが、松居さんの声を通して私の心に響いてきたのです。

 その後も毎回のご講演で、講師の方々それぞれの思いや願いや嘆きや希望が、声の言葉を通してしっかりと私のもとへ届けられました。それらの言葉は、講座を修了した今も、色褪せることなく私の中で生きています。そして絵本講師となった今は、この1年間で育まれた私自身の思いを声の言葉にのせて、子育て中のお母さんに伝えたくてたまりません。「絵本のある子育てをしませんか!子育てがステキになりますよ!!」と。

 そもそも受講のきっかけは、「家庭の中に絵本の読み聞かせを広めたい」という趣旨に深く共感したからです。私は、かれこれ15年以上、絵本や子どもの本に関わる生活をしています。地域での読み聞かせ活動、学校司書の仕事、我が子と絵本を楽しむ暮らし、そんな中で常々感じていたのは、家庭での読書の大切さです。「絵本の読み聞かせを幼いうちから家庭で取り組んでほしい」と。この「絵本講師・養成講座」の願うところは、私の長年の願いでもあったのです。子どもと接する現場にいて子どもらしくない子どもにたくさん出会い、絵本が彼らの心を溶かすことに気付き、気付いていながら何もできないでいた私。「絵本講師・養成講座」での1年間の学びは、これまで肌で感じてきたこと、言葉にならずにいたことを、きっぱりはっきりと形にしてくれました。そのうえ「さあ、それを発信しましょう!」と、私の背中を押してくれたのです。

 何よりも私にとって大きな収穫は、仲間に出会えたことです。絵本が大好きな仲間、絵本の読み聞かせのすばらしさを知っている仲間、読み聞かせを通して子どもの健やかな育ちを願う仲間。これまでも機会があれば家庭での読み聞かせの大切さを伝えていましたが、孤軍奮闘という感が否めませんでした。でも絵本講師となった今は、とても心強いです。だって、1000人以上の同志がいるのですから。胸を張って絵本の読み聞かせのすばらしさを届けることができます。この1年間一緒に楽しく深く励ましあって学んできた2グループの皆さんと出会えたことが大きな支えになっています。年齢も仕事も絵本との関わり方も様々に異なるメンバーと、それぞれの視点で絵本について語り合えたことは、刺激的で、魅力的で、とても贅沢な時間でした。毎回グループワークが楽しみになり、良い絵本を見つけると必ず、皆さんにご紹介したい!とワクワクしていたものです。実り多き時間をくださった2グループの皆さんには心から感謝しています。

  最終リポートは《絵本からの贈り物》というタイトルで、私の絵本講座を組み立てました。絵本は、そのページを開いた人に、たくさんの贈り物をくれます。物語や絵のすばらしさだけでなく、読んでくれる大人のぬくもりや愛情までも子どもの心に届けてくれるのです。そんな絵本の底力・可能性を確信できた1年間でした。それは「絵本講師・養成講座」から私が受け取った大切な贈り物です。日本中の、いえ世界中の子どもたちが、親や身近にいる大人から絵本を読んでもらうことが「当たり前」になる日を願い続けて、絵本が結んでくれたこのご縁をつないでいきたいと思っています。
(いわもと・みわ)


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