えほん育児日記

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~絵本フォーラム第96号(2014年09.10)より~  第2回

家族の思い出 我が家の絵本

夏 恒例の行事

恒例の行事 title= 夏、夏休み、旧暦のお盆。この季節は家族で過ごす時間がゆったりと流れます。恒例の行事があると、子ども達のこれまでの様子を振り返ってあらためて成長を感じることも多いものです。
 我が家の夏休み。「絵本で子育て」センター企画の伊座利ツアーには、毎年家族揃って参加します。徳島県の梅田俊作先生のアトリエと日和佐川、漁村・伊座利でのキャンプ。一泊ですが中身のぎゅ―っと詰まったツアーです。
 日和佐川は、本当に美しい川です。夏の日差し、空に浮かぶ雲。温められた川原の石の熱と、川の流れのそこここで違う水の冷たさ。何もかもがキラキラして、自然のものは一つ一つみんな違う、まったく同じ物なんてどこにもないのだ、とあらためて気づきます。風が枝葉を揺らす音、川の流れの音、虫の声、命あるものの「音」のなんとたくさん交じり合っていること! その中に、子ども達の歓声や、聞きなれた人の声が溶け込んで響く幸せ。俊作先生の巧みなリードで、子どもも大人も、自然に溶け込んでいる……。そう、私たちはみんな、ここ(自然)に帰ってきたかったんだ!と思うのです。もう、我が家にとってここはちょっとした郷里のようになっているのかもしれません。


大雨のなかで

大雨のなかで title=  今年の夏、とても残念でしたが、私たちは日和佐川で遊ぶことは叶いませんでした。ちょうどその日、たくさんたくさん雨が降って、日和佐から伊座利への移動も断念したのです。
 日和佐川は、俊作先生のアトリエから田んぼの畦道を行った、緑の土手の向こうにあります。土手を下りると、角がきれいに丸くなった石の川原があるのです。それがこの日はアトリエから川の方に目をやると、土手の高さの向こうに白く波立っていく流れが、見えました。私たちは、水は土手を越えてここまで来るのだろうかと、ドキドキしました。夜になって雨が上がると、今度は街灯もなく、星も月もないので、本当に墨を流したような闇夜でした。
 子ども達は、どうしていたでしょうか? 今日初めて出会ったばかり、年齢もばらばら。でも、アトリエでおちびさんのリクエストで始まったかくれんぼ。どうしたって体の大きい子には隠れきれる場所がない!(笑)。それから、カードゲームはいい感じにペアになって全員参加でやっている。そして、夕食のバーベキュー会場の納屋に俊作先生が並べてくださった何本ものろうそくを囲んで大宴会。食べ終わった子らはまた遊んでいる。優しい炎に照らされた彼らの顔の、なんときれいなこと!
 私たちは、予想外の出来事だって、みんなで助け合えば実に楽しく乗り越えられる。助け合いは実は頼りあい。信頼がある。それは何よりの安心。みんなが安心しているから、それぞれが自分のできることをちゃんとやれる。安心していれば、優しいやわらかい気持ち。大人も子どもも、それは同じ。
 家族で開くことのできる心の絵本がまた一冊、我が家に増えました。

子どもの成長を願って

 もうひとつ、思い出したことがありました。長男が小学校二年の夏、家族と離れてキャンプに参加した時のこと。その夜も大雨で、私は雷の音を下の子達と一緒に布団で聞きながら、娘に「お山に雨がふりました~」と何度も何度も歌っていました。連絡なきはよいニュース、と心に繰り返しながら。翌日、帰宅した息子は、疲れているはずなのに、いろんな話をお布団に入ってもまだ続けて、途切れたと思ったらもう寝息が聞こえてきたのでした。
 元気な顔で帰ってくること。そして最高のプレゼントは「土産話」。言葉だけでなく、話をしている表情や声に、キャンプでの息子の様子やその経験から得た小さな成長をみることができました。
 さあ、これから、子ども達はどんな旅に出るのでしょうか。だんだんと、多くは語ってくれなくなるかもしれないけれど、信じて送り出してやれるように、と思います。大人にとっては、日常の煩雑な仕事から離れた経験も貴重です。まだまだ、一緒の旅も楽しみましょう。そんなことを思った夏でした。
(くまだき・かよ)

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