私の絵本体験記

「絵本フォーラム」97号(2014年11.10)より

父と息子の絵本タイム

澤 美代子さん(東京都世田谷区)

澤美代子さん体験記"

 「パパ、これと、これと、これ、読んで!」「どれから読んでほしい?」ちょっと照れくさそうにしながら、ゆっくり読み進めていく声。眠る前は、私よりも夫に絵本を読んでほしい息子です。といっても、夫が絵本を読むようになったのは、実はここ1年ぐらいのこと。
 仕事でほとんど家にいない夫が息子と散歩にでかけた時に買った絵本が『おやすみ、はたらくくるまたち』(シェリー・ダスキー・リンカー/文、トム・リヒテンヘルド/絵、福本友美子/訳、ひさかたチャイルド)です。眠そうに目をこすりながら息子が持ってくる絵本の中に、必ずと言っていいほど入っている1冊。
 工事現場でがんがん働く力持ちのクレーン車、ミキサー車やショベルカー。そんな彼らも、夜になると「ふあ~」、とあくびをしてゆっくりと横たわり、明日の夢を見始めます。働く車たちは、いたずらでなんともチャーミングな表情を見せながら一日を終えていくのですが、夕日に向かい5台が並んだ後ろ姿は、哀愁漂わんばかり。一日を一生懸命がんばった者が見せる後ろ姿。なんてかっこいいんだろう。
 しっかりと眠って休もう。明日はどんないい事があるんだろう。  とてもシンプルなメッセージが、仕事でなかなか休めなかった夫にも響いたのか、男二人、そのまま眠りに入ってしまいます。寝顔しか見られなくても、朝行ってきます!の挨拶をする時間しかなくても、二人だけのこの1冊で距離はぐっと縮まる気がするのです。
《しーっ…… おやすみ…… ゆっくり おやすみ!》
(さわ・みよこ)

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