![]() 言葉は育っているが、友人と遊べない子どもたち ―キレる子、乱暴する子、仲間に入れない子― |
母親は、家庭ではいい子なのにどうしたものかと途方にくれて、川崎医大小児科へ紹介されてきました。診では会話は十分通じて、行動異常はまったく見られません。心理相談室でも異常なしとの返事でした。集団生活の中で経験を重ねることで、社会性は育つと言われました。 ある日幼稚園の先生が家庭訪問しますと、テレビがついており、その側で闘いもののゲームに熱中していました。幼稚園へ行ってくれれば、ゲームしたい放題のご褒美が待っていたのです。 一人っ子ですが、乳児期すくすく育ちました。1歳「ママ」「パパ」「ブーブー」。1歳8ヵ月「ママちょうだい」「ワンワンきた」と二語文。テレビは一日中ついていました。2歳ディズニーや闘いもののビデオ。3歳テレビゲーム中心の生活で、何不自由なく育ちました。 5月に入り、頭痛、腹痛を訴え、学校を休みがちになるので川崎医大小児科へ紹介されました。礼儀正しく標準語で喋り、方言が出ません。心理相談室の発達検査では、運動、言語ともバランスよく年齢相応の発達を示しました。しかし、口頭で答える課題で話し始めると止まらないなど衝動性が高く、また、記憶課題で集中力に欠ける結果でした。知的能力と対人関係とのバランスが悪いため、学校での集団行動が難しいと判定されました。 乳幼児期おとなしく手がかかりませんでした。テレビ、ビデオが遊びの中心で、一人で遊ぶことが多かったといいます。保育園でも友達と一緒に遊ばず、いつもおもちゃが遊び相手でした。買い物に連れて行くと、レジの順番が待てなかったり、好きなものを買ってもらえないと泣きわめいて、母親を困らせました。 小学校では、授業が始まっても教室の中に入らない、歩き回る、忘れ物が多い、話が飛びすぎる、同じ間違いを何度も繰り返す、自分のものを自分で管理できない、など問題行動が目立ちました。 話し言葉が十分育っていても、友達と遊べない子や、集団生活が苦手な子がいます。Aくんは集団生活に入ってはじめて友達と遊べないことに気付かされた幼稚園児です。Bくんは、3歳から保育園へ行きましたが、自己中心的で集団生活ができず、学校不適応に陥った小学一年児です。Cくんは、知的能力と対人関係のバランスが悪いため仲間に入れなかった中学一年男子です。3人とも、遊びのほとんどがテレビ・ビデオ・コンピュータゲームに集中しており、同世代の仲間とどのようにかかわってよいのか戸惑っている様子が手に取るようにわかります。大人には話が通じても、同世代の友達には難しいのですね。まして、コンピュータゲームにはまると、どんどん自分だけの世界に迷入し、最も大切な人格形成=人間の魂が育たないのです。自分で自分の脳を管理することを放棄してしまうのです。 |