伊座利ツアー報告

2013年夏(第5回)

< 伊座利ツアー報告 >

         2013.7.20〜7.21 「いちゃりばちょーでー」の旅
川遊び、花火、バーべキュー、
漁船クルージング……盛り沢山の夏

 蝉の鳴き声が日に日に力強くなってきた夏休み初日の7月20日、「はばたきの会」夏の恒例イベント「伊座利ツアー」が始まります。
徳島県在住の絵本作家・梅田俊作先生、佳子先生ご夫妻を訪ね、川遊び、海遊び、バーベキューと夏をたっぷり楽しむ旅は今年で開催5回目を迎えます。
JR芦屋駅前に集合して総勢38名が1台のバスに乗り込みいざ出発! 夏の青空がとても眩しく子ども達のテンションもどんどんあがっていくようです。
バスが走り出して自己紹介が始まりました。今回は遠く埼玉、横浜、沖縄から参加の方も多く、みなさん絵本も子どもも大好きな方ばかり。バスの中で初めてお会いした方ともすぐに打ち解けて会話が弾みます。3歳の小さな子どもから自称18歳の元気なお母さんまで、まさに異世代交流です。

「子ども達へおやつの差し入れがあります」と可愛くリボンでラッピングされたお菓子が席に届きました。嬉しそうに食べている子ども達を見ていたらなんと大人にも回ってきました。一つ一つ丁寧に選んでくださったお菓子が詰められた袋には池田加津子さん(はばたきの会副会長)の優しさも込められているようでした。
その後、昼食のお弁当を食べたり、子ども達が明石海峡大橋と鳴門海峡のガイドをしてくれたりと賑やかに過ごしました。途中、バーベキュー用のお野菜の調達と休憩で阿南市の道の駅「那賀川」に立ち寄りました。子ども達はかき氷やラムネ、ソフトクリームを堪能していました。収穫したての新鮮な野菜はどれも美味しそうで、今夜のバーベキューも今から楽しみです。

それからジェリー・マーティンさん(東京8期)による自作の絵本の読み聞かせがありました。流暢な英語がとても心地よく、韻を踏んだ単語がマザーグースのようで厳選された言葉が並ぶ絵本は世界共通だと感じました。
その心地よい声を聞いている後ろで中学1年生のお兄ちゃんが息子に日本語訳をしてくれている姿がとても微笑ましかったです。

バスは順調に目的地へ向けて進んでいきます。芦屋出発から4時間が経過した頃、いよいよ梅田先生のアトリエがある日和佐に入ります。
日和佐町は徳島市から南下すること1時間、日和佐川沿いにある山間の小さな町です。アトリエを目指して新緑の中の細く曲がりくねった山道を見事な運転で進みます。今回お世話になった運転手さんは2回目で、もうこの山道も手慣れたものです。こんな狭い所、通過出来るの!?という難所をクリアしたときには車内で拍手が沸き起こりました。

山の麓に6件の民家がありその1軒が梅田先生のアトリエとお住まいです。庭先で梅田先生ご夫妻が笑顔で出迎えてくださいました。早速、川へ急ぐ子ども達。収穫を秋に控えた稲穂の緑が両手に広がる畦道を歩きながら大人達も川へと向かいます。
川の水はとても冷たく照りつける太陽の暑さを忘れさせてくれる気持ちよさです。ライフジャケットを身につけた子ども達はカヌーに乗って川遊び。梅田先生が「上を向いて浮いてごらん、簡単に浮けるぞ」とお手本を見せてくださり早速子ども達も挑戦。澄み切った青空を両手に抱え込むように仰向けになると、自然と簡単にプカプカ浮いていました。
街ではスイミングスクールで習う泳法をここでは大人が遊びを通して子どもに教え、子どもも自然に覚えていく。泳法習得は本来こうあるべきだなと感じた瞬間でした。
川原の石は研磨されてツルツルで、岸一面に広がっていました。「ハートの形を見つけたよ!」「これは恐竜みたいだ!」あちこちで子ども達の嬉しそうな声が響きます。アクリル絵の具で色を付けて夏休みの自由研究にしてもいいね、という声も聞こえてきました。お店でキットを買って作る工作が普通の暮らしになっていましたが、生活の中にこういった発見が出来る事を、またここでも学びました。
芦屋にも芦屋川、宮川、それに海も近くにあります。まだまだ近所でも自然と親しむ事ができそうです。

川遊びをたっぷり堪能した後は、アトリエ前の庭で梅田先生のサイン会が始まります。愛読していた本を持ってきた人、アトリエで新たな絵本と出会った人、誰が声をかけた訳でもなく自然に先生の座っているデッキチェアーの前に列ができます。「ちょっと横を向いてみようか」先生の声でそこに横向きに座った女の子の横顔を風のようにサラサラと描きあげていきました。その絵本は女の子の一生の宝物になることでしょう。
お茶やお菓子を頂いて記念撮影をした後はバーベキュー会場と今夜の宿泊施設がある伊座利へ移動します。アトリエから30分程で到着。山の高台から少し下りる道は狭いのでバスから降りて皆で協力して荷物運びです。

そして恒例の大掃除が開始されます。役割は全く決まっていないのに自然と掃除機が出てきたら次はモップ、台所、縁側と散らばってそれぞれの仕事を進め、お腹がすいた頃には全ての準備が整っていました。
台所では漁師さんが差し入れしてくださった大きなアワビを材料に梅田先生のお料理教室が始まります。「台所を担当する人の特権だぞ」、と貝殻についたアワビの身の残りをスプーンで取り出しタイミングよくやって来た子ども達が口に入れたときの美味しそうな顔といったら、こちらまでしあわせになる大満足の笑顔です。
肝は手際よくバターで炒めて一品完成。梅田先生のお料理教室は他では味わう事の出来ない贅沢な「漁師料理」。こんな新鮮な食材に巡り会うことはなかなかない貴重な体験でした。
広間もピカピカになり炭にも火がつきお料理の準備もできたところで、乾杯! 今年は漁港で漁師さん達のお祭りがあったので、例年の大にぎわいとはいきませんでしたが、梅田先生ご夫妻と参加メンバーで会話が弾み楽しい夜を過ごします。
お腹が満たされたところで花火大会が始まります。打ち上げ花火に子ども達の歓声が伊座利の夜空に響き渡ります。

花火が終わると走り回っていた子どももおしゃべりに夢中になっていた大人もスクリーンの前に座って梅田先生の最新作『タイヨオ』の上映会を楽しみに待ちます。佳子先生が暗闇の中、懐中電灯の明かりを頼りにゆっくりとした優しい語り口で聞かせてくださいました。
いまだ増え続けるいじめを題材にした長編絵本。くやしいけどいじめはなくなりそうにないと語られた先生の言葉に大人も言葉を失いました。それでも少しでもそんな子どもの力になり、元気になってもらえる一冊の絵本がここに完成しました。上映会が終わり、子ども達は一日たっぷりかいた汗を流して眠りにつきました。

翌朝は漁師船に乗ってクルージング! 早朝の海の風は爽やかで、心地よく海から見渡す山々の絶景を眺めていたのも束の間、毎年恒例となっているという噂の右に左に舵を取り、波しぶきを立てる漁師さんの暴走が始まります。
振り落とされそうになるくらいの揺れで泣き出す子どももいたくらいスリル満点です。
梅田先生によるとこれは漁師さんの趣味のようなもので今年は何人泣かせたぞ、と後で自慢話になるそうです。運転席に座らせてもらった子どもは小さな船長さん気分を満喫していました。
クルージングから帰ってきたら川遊びと海遊び。天然記念物の手長えびやカニ、タニシを捕まえて大満足です。

たっぷり遊んだ後は「イザリcafe」のお母さん手作りのカレーライスとサラダが待っていました。愛情いっぱいのお昼ご飯、とても美味しくてお腹いっぱいになりました。デザートには大きなスイカが登場。スイカ割り大会が始まりました。小さい子どもから順番に、最後は18歳のお兄ちゃんが見事に割って甘いスイカを皆でいただきました。
それから梅田佳子先生による絵本の読み聞かせが始まります。『よりたかく よりはやく』。これは市販されていない貴重な絵本で防災教育の一環として作られました。津波の時は漁港組合よりも高い場所へ避難するように呼びかけたこの地域の子ども達に向けた絵本です。
実際に津波の経験が無い子ども達も真剣に聞き入っていました。こういった知識も絵本からだと、とてもわかりやすく、心に入ってくるような気がしました。
帰りのバスでは全身全霊で遊んだ疲れが出たのか皆ぐっすり寝てしまいました。心地よい眠りから覚めた頃に全員で旅の感想を伝え合いました。
その中で印象的だったのは、高山さんが紹介してくださった沖縄の方言です。「いちゃりばちょーでー」という言葉には、「今日出会った人は家族です」という意味があるそうです。
今日の参加メンバーは大きな家族のようで多くのお母さん、お父さんが皆でお互いをいたわりあって生活する様はまさに大家族。絵本でつながり出会った家族は心も身体も癒されて全員無事に芦屋駅に着くことができました。
はじめて出会った人同士でも大家族のようにひとつになれるのも、このツアーの魅力です。来年はどんな家族が待っているか楽しみですね。
現地で快く迎えてくださった梅田先生ご夫妻、伊座利のみなさん、二日間安全運転をしてくださったバスの運転手さん、企画から準備運営まで一手に担ってくださった事務局、幹事の方々に心から感謝をしつつ2日間の旅の報告を終わります。(なかむら・ゆみ)

 

 

報告者・中村由美(芦屋5期)


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