ソフィアセンターが 絵本で子育て講演会 読み聞かせで楽しい時間を

 

新潟日報

新潟日報 
2014年10月18日(土)
オピニオン
聞く 「絵本で子育て」を推進 
NPO法人理事長 森ゆり子さん

読み聞かせ 愛を伝える

■絵本の読み聞かせは、子ども達にどんな影響を与えるのでしょうか?

 絵本は家庭に生の言葉を取り戻し、リアルな親子関係をつくります。子どもの気持ちに反応しない一方通行のメディアであるテレビやビデオとは違います。例えば「ちびゴリラのちびちび」(ルース・ボーンスタイン作)では、「大好き」というせりふがたくさん出てきます。 読んでもらった子どもは、自分が親からそう言ってもらった気持ちになります。すぐに効果が出ることを期待しないで、ただただ親子で楽しい時間を過ごすようにしてください。2分でも毎日続けることで必ず、子どもの心は育っていきます。

■読み聞かせのやり方を教えてください。

 おなかの中にいるときから読んでほしい。生後2カ月になると、赤ちゃんは絵本の意味が分からなくてもリズムに反応します。育児書に「子どもにも話し掛けて」とあっても、何を言っていいのか分からないと悩む親もいます。だからまずは絵本を読んであげてほしい。過剰な演出は避けて、自然にゆっくりと読んでください。心が伝わります。

■現在の子どもたちを取り巻く環境をどう感じていますか。

 今の子どもたちは競争ばかりで過酷な時代を生きているように見えます。 ある講演会で「はやくはやくっていわないで」(益田ミリ作)を読んだら、30歳ぐらいの 女性が号泣しました。厳しい家庭で育ち、褒められた記憶がないといいます。「ゆっくりでもいいと、受け止められた気持ちになった」と言われました。現代は情報が氾濫しているため、親たちも不安になっています。自分の子どもが落ちこぼれてはいけないと思うあまり、親と子の気持ちのギャップが大きくなった。だからこそ、いい絵本を選んで楽しい時間を過ごしてほしいと感じています。

 ■よい絵本の選び方を教えてください。

 有名なお話の「桃太郎」の絵本は手に入るだけでも20冊くらいありますが、お薦めできるのは数冊です。桃太郎がなぜ、鬼退治に行かなければならないのかという過程をきちんと描いている絵本は少ない。省略ばかりの絵本では子どもの心を育めない。本を手にとって初版がいつかを確認してほしい。10年、20年読み継がれた本はいい本だと思うからです。

 ■絵本講師・養成講座は11年目になりますね。

 子育てにとって、いかに絵本の読み聞かせが必要かを学び、それを語り伝える人材を育てたいと考え始めました。これまでに約1200人が修了しました。若い親の手助けをしたいと「絵本で子育て」を訴えてきましたが、講座を通じてその活動を全国に広げていきたいと思っています。

インタビューを終えて

 柏崎市で今月開かれた森さんの講演会を取材した。参加者の中には涙を流している女性がいた。2人の幼い子どもがいる母親だった。声を掛けると「森さんのように優しく読み聞かせをしているか、反省しました」と話してくれた。育児は毎日、毎日続く。肩の力を抜いて、読む側も絵本を楽しんでほしいと思う。

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