個々の作品に関する学生たちの反応について、まず『人魚姫』では、彼女の《報われない、悲しく切ない恋》について、大多数の共感が寄せられたが、中には少し気になる感想も見られたので、少しばかりプッシュしてみることにして、次の質問を提示した。(1)「もしあなただったら、魔女からもらった薬を飲みますか?」(2)「もしあなただったら、王子を刺しますか?」と。(2)の結果は「刺す24%」「刺さない・刺せない64%」(愛する人の幸せを願うから16%)となった。 「状況がほんとうに理解できているか」とか「奇を衒ったり、プッたしていると見られなくもない回答」も見受けられるので、そのまま受け入れるわけにはいかないが、それなりにある傾向を示していると言えるのではないか。どうしても自己中心的になり、《無償の愛》はどこに行ったのか?と嘆くのか。それとも「女性の自我」が確立されつつあると喜ぶべきなのか。とは言うものの、ほとんどの学生たちが「切ない」「胸が痛む」「涙がでた」と感想を述べてくれており、アンデルセンの《思い》は確かに伝わってると思う。 アンデルセンに関して、忘れていけないのは、偉大なストーリーテーラーとしての巧みな《語り口》である。各作品の要所々を、原作を忠実に翻訳していると思われる『岩波少年文庫』によって再度読み聞かせた。『人魚姫』冒頭の人魚の宮殿の描写等のすばらしさに学生たちも感動していたようだ。 当初、《テキスト無しでやれるだろうか》と心配していたが、少なくともこと《童話》に関しては、活字を見ない方がより集中できて、イメージも描き易いという感想を聞くようになってきた。 前へ★次へ |