リレー

子どもと向き合う時間
(八戸市中居林保育園園長・椛沢 幸苗)


写真  最近、学級崩壊が低年齢化し、今や幼稚園の4歳児クラスにまで及んでいる現状があると聞きます。この現象はまだ一般的とは言えないでしょうが、落ち着きのない子や言葉の理解の遅い子、目を合わせることができない子が年々増えていることは確かです。
 こういう子どもたちは、他者とのコミュニケーションを取ることが苦手です。話しかけても目を合わせず、早くその場を去りたい、と 言うように常に体を小さく動かしそわそわしています。
 例えば「昨日のお休みは何をして遊んだの?」と聞いても窓の外を見ながら「雨が降ってるよ」とか「お友達があっちへ行ったよ」などのように質問に対して的確な答えを返すことができません。これは、質問の内容を理解できないのではなく、理解しようとしない。つまり、相手との関わりを無意識のうちに遮断しているのです。
 どうしてこんなことが起きるのでしょう。子どもは生まれる前からお母さんとのやりとりを楽しんでいます。ところが、生まれてきた途端に期待した優しいお母さんの顔ではなく、子どもの意思とはまったく無関係に次から次と進んでいくテレビの画面が四六時中目の前にあれば、意思表示をする気も相手の話を聞く気もなくなります。子どもには、その年齢にあった時間の流れと関わり方が必要です。ゆっくりお母さんと向き合う時間や体験が心の安定と自分肯定感を作り、他者との関わりを喜べるようになるのです。
 保育の現場で子どもを見ながらこのような小さなことが、学級崩壊をなくすことに繋がるような気がしています。
絵本フォーラム20号(2002年01.10)より

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