リレー

想像の世界へ続くすてきな空間
(福岡・加布里小学校図書館担当教諭・中村さちえ)


写真  小学校の図書館の扉を開けると、小さな子ども向けの絵本から、字がいっぱいの本までいろんな本が、教室より少し広い空間に並んでいます。のぞいてみると、子どもの頃に読んでもらったり、大好きだった本たちが「ひさしぶり」と挨拶。また「おもしろいよ、読んでみない?」なんて話しかけてくる本など。ここは想像の世界へ続くすてきな空間です。でも、どれくらい《想像の翼》を広げ本を読みふけっているでしょうか…。
 最近よく子どもの読書離れと言われますが、図書の時間(学級で図書館を利用する時間)を楽しみにし、図書館に来たら、好きな本を借りて読んでいる姿を見ると、読書が嫌いなわけではないなと思います。でもやっぱり、本を決めきらない子もいます。2年生の男の子も、そんな感じでうろうろしていました。声をかけると「読みたい本がない」と言います。そこで私は、『おばけにあったうさんごろ』という本を勧めてみました。子どもの大好きな「おばけ」そして「うさんごろ」です。その世界が魅力的に見えない訳がないでしょう。その子は喜んで読み、「結構おもしろいよ」なんて教えてくれました。
 また、学校の図書館を昼休みに開館すると常連さんが来ます。彼らは来るとほとんどマンガの本を選びます。マンガは良くないと言うつもりはないのですが、マンガは、想像の世界がこっちに来てくれる読み物のように思います。マンガは、マンガの次に本の世界に踏み込むきっかけ作り、これが今の私の一番のたくらみです。
 子どもたちは、誰でも想像の翼を広げ、飛び回る力を持っています。でもそれは、自然に育つのではなく、私たち大人が本を与え、読んであげ、きっかけとなって初めて力となるのです。
 学校の図書館、そこは小さな教室ですが、想像の世界へ続くすてきな空間でありたいと思います。そして、どの家庭にもそんな空間があることを願っています。
絵本フォーラム24号(2009年09.10)より

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