リレー

家庭自体が危ない状態と危惧
(兵庫・神戸市立六甲道児童館館長・向井 真千子)


 児童館は子どもたちが自分の意志で自由に出入りができる「遊び場」です。管理や束縛がほとんどなく、自主性が尊重される子どもたちの自由な空間なのです。毎日、子どもたちの成長に欠かせない遊びが繰り広げられているのですが、最近子どもたちの様子を見ているととても気になる事があります。どこで覚えてきたのかと思うような乱暴な言葉遣いは子どもの間だけでなく、職員にも同じように向けられます。また、ほんの些細な事、相手の手足が触れたとか、にらまれたとかの理由でとことん相手を攻撃します。どう見ても自分のイライラを発散させているとしか思えないのです。注意されても反省する様子もなく「すっきりしたわ」と言い放つ姿は、きっと保護者や学校の先生も知らない子どもの一面だと思います。自分さえ気持ち良かったら、相手がどう感じようとも関係ないという風です。
 人と人との良好な関係を作るために必要な基本的な思いやりの心は、本来毎日の生活の中で家族との関わりを通して育まれるものだと思います。自分が大切にされていると思えてこそ人を思いやれるのです。その家庭自体が危ない状態になっているのではと危惧しています。
 児童館では様々な活動の一つとして、子どもたちに紙芝居や読み聞かせをしています。ある日、寄贈してもらった大型絵本を子どもたちに見せたところ、とても集中して聞いていたのです。話が佳境に入ると表情が変わってきて、お話の世界に入り込んでいるのが見て取れるのです。子どもたちには豊かな感性があることを改めて実感しました。刺激に溢れるテレビやビデオを見ることに慣れた子どもにとって、ゆっくりとイメージを働かせる時間を持つことはとても大切なことです。読み聞かせをはじめ多様な遊びを通して、また、人とのふれあいを重ねていくことで子どもたちに思いやりの心が育ってくれることを願っています。
絵本フォーラム26号(2003年1.10)より

前へ次へ