リレー

絵本とともに愛情子育て
(兵庫・関宮町中央公民館館長・栃下 真喜子)


 絵本がこんなにも人生を豊かにし、人間形成に大きな影響を及ぼすものであり、子どもにとっても、大人になっても、一生涯を通して楽しめる素晴らしいものであるというお話は、衝撃的に私の耳に入ってきました。というのも、私はこれまでの仕事や生活の中で、絵本に携わることなどまったくと言っていいほど無縁で、あまりにも無知な状態でしたから。
 今、日本では青少年の犯罪が毎日のようにニュースになり、それももう日常の出来事としてとらえられ、世間でもさほど珍しい事件ではないという感覚さえ持たれているような気がします。
 女性が働くことは意義もあり、社会にとっても重要なことです。しかし、子育て中のお母さんが生活のために働きに出かけることで、家では家事に追いまくられ、子育てがおろそかになったり、手抜きになったりしていないとも限りません。そのことによって子どもにしわ寄せを与えてしまっては、かえってあだになってしまいます。
 誰でも彼でもというわけではありませんが、また、経済的な保障や支援を含めて、国の制度や社会の仕組みを確立することが先決かもしれませんが、できれば乳幼児のうちは家庭でゆったりと、しっかりとお母さんが愛情子育てに専念できれば、と常々考えています。
 非行やいじめや犯罪のない平和な、心が豊かで安心して暮らせる世の中にするためには、こんな子育てが最も手っ取り早い方法の一つではないでしょうか。
 子どもの人生を左右するかもしれない重要な感性を育む一時期を、そして母親としての特権を生かすことのできる人生の一時期を、絵本を片手に楽しめたらどんなに素晴らしいことでしょう。
絵本フォーラム30号(2003年9.10)より

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