リレー

まず親が絵本を読んでみよう
(兵庫・私立中高等学校教諭・米田 俊彦)


 「テレビ(ビデオ、ゲームも)ばっかり見ていないで、勉強しなさい」という言葉は、子どもに対する親の願いを言い表したものと言えるでしょう。多くの親は、子どもが勉強していればもちろん、大体読書をしていれば、この言葉を言わないと思います。つまり、この「勉強しなさい」は、本を読む子に育ってほしいということを子どもに伝えている言葉だと思われます(それならそう言えばいいとも思うのですが…)。
 世間では、子どもの活字離れが激しい、読書離れが進行している、さらに日本語がおかしいなどなど、読書をしないことから来る弊害が日々話題に上ります。そして、その対策として多くの学校で朝の読書が取り入れられ、またNIE(Newspaper in Education=教育に新聞を)の実践が行われ、多くの成果を上げてはいます。
 しかし、本当に考えなければならないことは、親の願いが子どもにきちんと伝わっていないということではないでしょうか。本をよく読む子に育ってほしいという願いが、現実にはなかなか実現しないということなのです。これは親としてとても悲しいことです。
 心がささくれ立ったときでも、絵本を声に出して読むと必ず優しい読み方になるという話を聞いたことがあります。親が悲しんでばかりいても仕方がないので、まず自分自身が絵本を声に出して読んでみるとよいのではないかと思います。親が優しい声で本を読み、笑顔でいることが、子どもに悪い影響を与えるはずがありません。「勉強しなさい」という言葉をできるだけ言わず、テレビのスイッチを切って、声に出して本を読むことから始めていきたいと思っている今日このごろです。
絵本フォーラム31号(2003年11.10)より

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