リレー

読み聞かせで知る「絵本の味」
(堀内 恵子)


 絵本ファンの私にとっては、うれしい現象が起きている。大人の雑誌の特集に絵本が取り上げられたり、絵本を眺めながらティータイムを楽しめる絵本カフェも登場してきた。「絵本は人生で三度読むべきである。幼いとき、親になったとき、人生の後半に差しかかったとき……」と、作家の柳田国男氏もおっしゃっています。絵本は知れば知るほど奥が深く、極上の味わいです。年齢制限なく、皆様にオススメしたいと思っています。そういう私も実は、絵本の本当の味を知ったのは出会ってからずっと後のことになります。
 私は7年前から、近くの小学校で読み聞かせをしています。私にとって、この「読み聞かせ」との出会いが絵本の本当の味に気づく大きなきっかけでした。活動を始めて5年目に地元の公民館からの依頼で、読み聞かせボランティアの集まりに講師として参加したときのことです。私はそこで、皆さんが読む練習のための聞き手役になり、目からウロコの体験をしました。いつも読み慣れた、聞き覚えのある本なのに、読んでもらってみると、まるで別の本のような新鮮な驚きの連続でした。絵本の中の言葉を耳で味わい、絵を目で隅々まで読み、自由にイメージを膨らます楽しい体験……。それは一人で手に取って読んだときとは比べものにならないほどの極上の味との出会いでした。この味は心の栄養となるはずです。
 絵本が子どもによいことを知らない親はいない。でも、子どもに聞くと、実際に読んでもらっている子は少ないのです。一人でも多くの大人が読み聞かせを通して、忘れていたあの味を思い出せば、絵本で子育てする楽しさが広まっていくに違いない。絵本講師として、そのお手伝いを私はしていきたいと思っています。
絵本フォーラム43号(2005年11.10)より

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