リレー

読み手の声を通して伝わる気持ち
(広島・おのみち学校で本を読む会「ルピナス」会員/堀 純子)


 幼稚園や保育園に行って園児たちに本の読み語りをする時いつも聞くことがあります。「お家で誰に読んでもらうの?」
 「お父さん」や「お母さん」などの答えの中に「私一人で読むんよ」という声がよく聞かれるようになってきました。
 お母さんが子どもに言う声が聞こえてくるようです。「あんたも字が読めるんだから一人で読みなさい」と。
 わずか4、5歳の子どもに「字が読めるのだから一人で本を読め」という言葉は禁句にしてほしいと思うのです。なぜなら、東京子ども図書館の松岡享子さんはおっしゃいます。
「子どもに本を読んであげるとき、その声を通して物語と一緒にさまざまのよいものが子どもの心に流れこみます」と。
 優れた子どもの本には作家や詩人、科学者などのその考えや思いが、選び抜かれた言葉で物語や知識の世界として広がっていきます。そして画家も一人一人の個性的な世界を描き物語を支えています。
 そんな素晴らしい絵本を大人が子どもに読むとき、必ず活字を音声に変える以上の働きが生まれるというのです。
 それは読み手の物語の理解、解釈、好みなどが読み手の声を通して伝わるからなのでしょう。
 聞いている子どもたちは物語と一緒にそれらを吸収することになるのです。
 絵本は子どもに読ませる本ではない。大人が読んであげる本だといいます。
 いくら良い本がそばにあっても絵本を読んでくれる大人がいなかったら、子どもに絵本の楽しさは届かないのです。
 読んでくれるお父さんお母さんの声に子どもは愛情をいっぱい感じて、楽しんだり悲しんだりしながら、一緒に楽しむその中で子どものこころが育つのです。お父さん、お母さん、どうぞたくさん読んであげてください。
絵本フォーラム45号(2006年03.10)より

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