こども歳時記
〜絵本フォーラム第18号(2001年9.10)より〜
お疲れさまでした
 全国のお母さんたち(そして一部の育児に関わったお父さんたちも)お疲れさまでした。やっと、夏が終わりました。暑さをものともせずくっついてまわり、パワフルにもっと遊んで攻撃を繰り返す子どもたちから少しだけ解放される(!?)季節がやってきました。ホッとされている方も多いのではないでしょうか。深呼吸して肩から力を抜いて、ちょっとリラックスしたら、まあるい言葉や笑顔もふえるのではないでしょうか。
心にもうるおいを
 その程度ではとても笑顔なんて…という方には、紫外線で傷んだお肌を栄養クリームでケアするように、心のカサツキには『海外秀作絵本』(ほるぷ出版)がおすすめです。
 心のケアに一番効果的なのは、お子さんが眠ってしまったあとの大人の時間に、貴方の大好きな人に絵本を読んでもらうこと。2〜3日でも体験してみるときっと心が優しくなっていることでしょう。残念ながら読んでもらうことがかなわない方は、一人になれる時間をまず確保して下さい。特にお母さんは、「母でも妻でも嫁でもない私にもどる時間」を作ってください。5分でも10分でもかまいません。そして、出来れば好みの飲み物を用意して、ゆっくりと絵をながめながらページをめくるのです。
 『にぐるまひいて』(ドナルド・ホール文、バーバラ・クーニー絵)は、あるニューイングランド人の一家の一年間を淡々と描いています。古き良き時代のアメリカの暮らしぶりを、優しくのどかに伝えてくれてもいるのですが、生活するってこういうことだよね、家族ってあったかいものだよね、と思い出させてくれたりもするのです。『キューピットとプシケー』(ウォルター・ペーター文、エロール・ル・カイン絵)で熱い恋を思い出すもよし。『たのしいホッキーファミリー』(レイン・スミス作、青山南訳)の上質のナンセンスで笑うのもいいですね。そんなゆったりとした気分のこんな時間が大人にも必要なんです。

「たのしいホッキーファミリー」
(ほるぷ出版)
にぐるまひいて
「にぐるまひいて」
(ほるぷ出版)

「キューピットとプシケー」
(ほるぷ出版)
あなたの声につつまれて
 ほるぷフォーラムでは「絵本講座」を出前しておりますが、時間に余裕がある講座の最後には大人のために絵本の読み聞かせをすることがあります。そこで初めて絵本を読み聞かせてもらう体験をされた方も少なくないようです。「大人にとっても、嬉しいものなんですね」とか「涙が出そうになりました」などの感想も頂いています。集団の中で初対面の人から読んでもらっても、うれしいあたたかい気持ちになる人は多いのです。ましてや、自分のために大好きな人から読んでもらうことの幸福感を想像してみてください。そして、そんな気分の時には人に対しても優しくなれるのではないでしょうか。 子どもも同じです。うれしくて楽しい毎日を過ごしている子がイジワルな子にはならないでしょう。子どもでも「いやし」たいことがあって、山ほどの絵本を抱えてくることもあるのです。どうぞ読んであげてください。あなたの声で抱きしめてあげてください。
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