こども歳時記
〜絵本フォーラム第32号(2004年01.10)より〜
年の初めに、「よいところ」探しを
 あけましておめでとうございます。  今年はよりよい1年にしたいですね。そこで、新年早々ではありますが、大人の皆さんに一つ問題を出したいと思います。あなたのお子さんの「よいところ」を、三つでいいから挙げてください。
 これは、普段の親子関係を見直していただくための問題です。5分で浮かぶ人は、とりあえず安心。しばらく考えて、何とか思いつく人は、まあまあ。探しても見つからないという人は、ちょっと危険信号です。子どものあら探しの前に、自分を見直すところから始めてみましょう。
 さて、お子さんは自分に「よいところ」があることを知っていますか。また、皆さんはそれを認めてあげているでしょうか。子どもは、認められることで自信を持ち、より能力を伸ばすエネルギーを生み出していくものなのです。

『こぎつねコンチ』
(のら書店)
 「一年の計は元旦にあり」という言葉がありますが、年の初めに当たって、改めて、お子さんの「よいところ」探しをしてみませんか。そして、今年1年、それを意識してほめてみましょうよ。きっと、家庭に笑顔が増えますよ。「どうしても見つからない。子育て、家事、仕事に追われて、それどころではない」という方は、逆に、あなた自身に助けや休息が必要な状態ではないでしょうか。どうぞ一人で抱え込まないようにしてください。
 『こぎつねコンチ』(中川季枝子/さく、山脇百合子/え、のら書店)のコンチ一家の「おしょうがつ」をのぞいてみませんか。この絵本は、春夏秋冬、12の短編で構成されています。もちろん幼い子どもも楽しめますが、大人にとっても、子どもとのかかわり方、声のかけ方など、アドバイス満載です。「こんな言い方もできるよね」と反省したり、参考にしたり。きっと、子育ての助けとなってくれることでしょう。
「死」を見つめ、生きる勇気を
 『おじいちゃんが冬へ旅立つとき』(C・K・ストリート/作、小野章/訳、H・フレンク/画、あかね書房)は、アメリカ・インディアンの老人タイファと、その孫リトル・サンダーとのふれあいを描いた物語です。死を前にしたタイファが孫に語りかける言葉を通して、白人とインディアンの価値観の違い、大自然の摂理、死の意味までも読者に伝えてくれます。
 「それでも、わしはいかねばならんのだ……おまえがわしをおぼえていてくれるかぎり……わしはいつもおまえといっしょにいるんだ」「命はつぎの命にひきついでいかねばならぬ」ひとりぼっちになったリトル・サンダーは、その言葉によって、改めて生きる勇気を持つことになるのです。
 この本は、きっと皆さんの心にも、何か大切なものを与えてくれるのではないでしょうか。

『おじいちゃんが冬へ旅立つとき』
(あかね書房)

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