『こどもたちのライフハザード』 (岩波書店) |
『こどもたちのライフハザード』(瀧井宏臣/著、岩波書店)は、現代の生活破壊が子どもたちの心身に及ぼす異変の実態を明らかにし、再生の可能性を探るルポルタージュである。「これほどひどい生活実態にもかかわらず、こどもたちがこの程度の実状でけなげに生き抜いているのが奇跡的」と本書は訴える。それほど子どもが「人」として成長していくための環境が失われてきているのだ。
幼いときから何を見たり聞いたり読んだりしてきたか。その蓄積が人格の土台となる。美しいこと、楽しいこと、愛されていること、悲しみ、切なさ、痛みをどれだけ感じてきたか。それが心のひだを増やし、思いやりをはぐくみ、心を成長させる。本を読んで様々な感情を体験したり、人の話を聞いて、その意味を考えたりすることで、子どもは「人」として成長していくのだ。現在、子どもたちが心で感じる機会がどれだけあるだろうか。
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