こども歳時記
〜絵本フォーラム第42号(2005年09.10)より〜
ささやかな幸せを感じる心の余裕をもちましよう!
 夏も終わりに近づき、秋の色がちらほら目につき始めました。子どもたちは楽しい夏休みを過ごせたでしょうか。お母さんたちは、ホッと一息というところでしょうね。
 でも、長期休みの後の集団生活では、不安定気味になる子も少なくありません。その兆しを感じるというご家庭では、きちんと睡眠時間を確保したりして、生活リズムを整えてあげてください。それには、読み聞かせをしてあげることも効果的です。しっかり心を添えて読んであげることで、子どもの心は安らぎ、落ち着きを取り戻します。あなたの声でお子さんの心を包んであげてください。愛する人に抱きしめてもらうことで、子どもの心と体はきっと優しく元気になれると思います。そして、その幸せは一生の思い出となることでしょう。

 幸せといえば、年収額と幸福度の関係を調べたデータがあるそうです。それによると、お金がたくさんあるほど幸せかというと、そうでもなく、年収額のどの階層でも、幸せと感じている比率は大して変わらないということでした。
 ちょっと思い出してみてください。あなたが最近感じた幸せって、どんなことですか。私は……。そう、虹を見たことです。私は昔から、虹を見ると何だかとってもうれしくなって、みんなに知らせたくなります。みんなにもうれしくなってほしいのかな、私がうれしいことをわかってほしいのかな。よくわからないけれど、その気持ちをみんなと分かち合いたくなるんです。そして、一緒に喜んでくれる人がいるともっとうれしくなります。これが私の小さな幸せです。

『ハッピーバースディー』
(金の星社)
 ささやかなことでも幸せを感じることができるかどうか、というのもその人の能力ではないでしょうか。例えば、美しい夕焼けにも目を止めず、何とも思わない生活と、夕焼けがだんだん夕暮れに移りゆく様に見とれる瞬間のある生活とでは、どちらが幸せでしょう。
 「忙しいから」「そんな余裕はない」という声もよく耳にしますが、それは時間に余裕がないだけでなく、心にも余裕がなくなってしまっているのではないでしょうか。仕事や雑多なことに追い立てられて、キリキリした生活を続けていると、自分を見失ってしまうことがあります。たとえ時間に余裕がなくても、身の回りのささやかなことに幸せを感じられる心の余裕を持つことはとても大事です。大人の皆さん、最近幸せな瞬間がありましたか。大人が幸せでないと、子どもも幸せにはなれないんですよ(子どもを放って遊んで回るという意味ではありません。念のため)。

「その気になれば変われるのが、人間なんだって」と、『ハッピーバースデー 命かがやく瞬間(とき)』(青木和雄/作、加藤美紀/画、金の星社)のあすかは言います。「おとなにあまえられたら、ほんと、おしつぶされるしかないよねぇ。勘弁してほしいよ」大人の問題を押しつけられた、11歳の子どものつぶやきです。母に優しくしてもらえないあすかの心は弱く小さくなっていき、声も失いますが、祖父母の愛情をいっぱい受けて、元気を取り戻します。そして、自分を取り戻したあすかの強い生き方が、周りの人をも変えていくのです。子どもとかかわる大人の必読書。この本で、親としてのあり方を見直すことができたお母さんもいます。まず大人が読んでください。そして、小さな幸せを見つけられる大人になってほしいと思うのです。
 まず大人の皆さんが本を読んで、感じ、考えてみてください。しなければならないことやできることが見えてくるかもしれませんよ。(松)

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