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報告者
東京7期生
中田 朋子
第3編 〜絵本講座について〜
2011年9月10日(土) レインボー会館
主催:NPO法人「絵本で子育て」センター  共催:ほるぷフォーラム社
協賛:岩崎書店・偕成社・金の星社・こぐま社・鈴木出版・童心社・福音館書店・ほるぷ出版・理論社

 暦の上では秋だというのに、相変わらずの暑さの中、9月10日土曜日に飯田橋レインボービルにて第8期絵本講師・養成講座(東京会場)、第3編が開催されました。

  午前の部は、劇団「天童」を主宰されておられる浜島代志子氏が「読み語りの楽しさ(実演)」についてお話をしてくださいました。 「なぜ、日本ばかりが撃たれるのか。でも、これには意味があると思います」というお話からはじまりました。 絵本の読み聞かせがなぜ大切なのか、物語のもつ力、そして今の親子の実情を話してくださいました。

 そして、「絵本が日本を救います。楽しくないと、人の心には入っていかないので、読む技術が必要です。人材育成は絵本でできます。だけど、今のやり方では厳しい」と力強い口調で話されました。「学校で、読み聞かせボランティアをしている方もいらっしゃるでしょうけど、つまらないという子もいるのです」 この言葉を聞いて、私の読み聞かせを聞いてくれている子どもたちは、楽しんでくれているだろうか?とドキッとしました。

  また、「楽しければいいと、受けねらいの絵本にはしってしまうのは、それは違います。 絵本は心の栄養、食事であるから、選書はとても大切で、読む工夫が必要です」というお話でした。 「つるにょうぼう」のお話をもとに、どうしてつるだったのか?どうして、やさしい若者が、約束をやぶってしまったのか、などについてお話してくださいました。 「日本人が残してくれたものをきちんと伝えるために、原点を押さえなければならない」というお話で、「理屈、理論武装はしておかなければならない、子どもの前では理屈は関係ありません」という言葉に、私自身が絵本を理解することで、子どもたちへの伝わり方が変わってくるのだということに改めて気づき、もっと勉強していこうと、決意をあらたにしました。お話の後は、3冊の絵本の読み聞かせを実演してくださいました。

 今回は、音楽を流しての読み聞かせでした。『タニファ』(ロビン・カワキワ/著 浜島代志子/訳、コスモトゥーワン)は、場面ごとに音楽をかえての読み聞かせ、『太陽へとぶ矢』(ジェラルド・マクダーモット/著 神宮輝夫/訳、ほるぷ出版)は、音楽だけではなく、歌もあり、踊りもありとミュージカルのようでした。『みにくいあひるの子』(ハンス・クリスチャン・アンデルセン/作 スベン・オットー/絵 木村由利子/訳、ほるぷ出版)の絵本は長すぎるといわれるけれども、原文を大切にしているので、長ければつまめばいいということで、実演してくださいました。

 「子どもたちに希望を与えましょう。絵本で復興できます。皆さんが、日本を復興させてくださる、頑張ってくださいとはいいません。一緒に頑張りましょう!」という力強いメッセージがとても印象にのこりました。

 午後の講演は、片岡直樹氏(川崎医科大学名誉教授、Kids 21子育て研究所所長)の「テレビ・ビデオが子どもの心を破壊している」でした。 「人間のはじまりである赤ちゃんのころ、1〜2年の間に魂が育ちます。「三つ子の魂百まで」とは昔の人はよく言ったものです」とお話され、赤ちゃんの心がどのように育っていくかということをお話してくださいました。赤ちゃんは、親との関係から、コミュニケーションの仕方を学ぶので、メディアがでてきてから、親と子の応答環境が少なくなってしまい、40年前から比べると、発達障害の子どもは100倍に増えているそうです。
常に、テレビ、おもちゃ、CDなどの機械音が流れている家庭。お父さんが、絵本を読んであげても、反応をしない子ども。無表情で、声をまったく発しない子ども。お父さんと、一緒に散歩をしているようだけれども、子どもは勝手に好きなところに歩いている。メディアが氾濫する前には、自閉症だった子どもの親は、高学歴だったそうで、それは、今でいう早期教育を子どもに与えていたからだそうです。子どもに、覚えさせるために、子どもは何を失っているか? と問いかけられたとき、ハッとしました。

 自分も子どもが小さいとき、早期教育をしたほうがいいのではと考えたことがあり、そのときに、物を覚えさせるのだから、得ることはあっても、何かを失うということは、まったく考えませんでした。きっと、多くの早期教育をしている方たちも、同じなのではないかと思いました。 赤ちゃんの神経回路は親がつくるもので、親がそばにいることが大切で、教えてはいけないと話されました。それは、生まれたとき、赤ちゃんはゼロの状態なので、模倣とスキンシップが赤ちゃんを育てていきます。
動物の赤ちゃんは、刷り込みをされているので、狼にそだてられても、狼のようになることはなく、たとえば、チンパンジーだったら、立派なチンパンジーになります。人間の赤ちゃんは、狼に育てられたら、狼の子に育ちます。テレビの前にいたら、テレビの子になる、人間の前にいなければ、人間の子にならない。

 そしてゲーム脳は、前頭葉が使われない状態なので、認知症と一緒の状態であること、ゲーム脳を回復させる遊びなども教えてくださいました。テレビをみせることが当たり前、ゲームを持っていることが当たり前の時代だからこそ、メディアの害をきちんと説明し、一人でも多くの方に理解してもらえるように、絵本講師としてしっかりと伝えていかなければならないと肝に銘じました。

 グループワークの前に藤井専任講師から、『絵本フォーラム』(第78号) に掲載された京都大学原子炉実験所、助教・小出裕章先生へのインタビュー記事についてのお話がありました。
メディアが正しいことを書いているとは限らないこと、裏にある事実を見る、考える能力のことをメディアリテラシー(media literacy)といいますが、その力を養ってほしいといわれました。 原発問題について、本当に大切なことは、事故がおきないように、次の世代へおくっていくこと、忘れないようにするためには、集団を作って危険を伝えていかなければいけない、絵本で子育てできるような社会を、危険ではなく、安全な社会を作っていかなければならない、というお話でした。

  私は絵本講師として、もっといろんなことを勉強して真実を見極められるよう、そして、多くの人に伝えていけるように、自分をさらに磨いていこうと身が引き締まりました。

 グループワークでは、浜島先生、片岡先生、どちらの講義についてもいろんな意見が活発に交わされていました。1時間では時間が足りず、あっという間に時間が過ぎてしまいました。その短い時間の中でも、絵本の紹介をしたり、読み聞かせをしたりしている姿が見られました。 私自身も毎回、たくさん学ばせていただき刺激を受け、とても貴重な時間をすごさせていただき感謝しております。 次回は、11月26日(土)になります。季節の変わり目は、体調を崩しやすい時期ですので、お身体ご自愛ください。次回、皆様にお会いできる日を楽しみにしております。(なかた・ともこ)

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