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報告者
芦屋7期生
林 真由美
第3編 〜絵本講座について〜
2011年8月20日(土) ラポルテホール
主催:NPO法人「絵本で子育て」センター  共催:ほるぷフォーラム社
協賛:岩崎書店・偕成社・金の星社・こぐま社・鈴木出版・童心社・福音館書店・ほるぷ出版・理論社

 「がんばろう日本」をスローガンに熱戦を繰り広げた今年の甲子園。決勝戦が行われた 8 月 20 日、芦屋市ラポルテホールにて第3編「絵本講師・養成講座」が開催されました。 

 今回は福音館書店の松居直先生をお迎えし「絵本のよろこび」というテーマでご講演頂きました。

 まず先生は「こどもに読む前に絵本を自分の本としてしっかり読んでほしい」「何を願ってかいてあるのか?自分の中に取り込んでから読んであげてほしい。そうでないと伝わらない」と話されました。それは子ども達に「絵本という文化」を届ける私たち大人の姿勢、責任を考えさせられる言葉でした。 

 次に先生の幼少期の思い出をお話してくださいました。先生は6人兄弟の5番目。

 幼いころ、日中は多忙なお母様が毎晩自分だけに本を読んでくれたひとときをこう話されました。「それは至福の時だった。生き甲斐だった。そしてそれは、今、私の最大の力になっている」と。その時の先生の表情は、まるで当時の幼いころに戻ったような喜びが御顔いっぱいに表われているようでした。

 私はその表情を見て「絵本の読み聞かせはその人の生きる力になるのだ」と強く感じました。そして、その力は何年経っても何十年経っても、その人の心にしっかりと根をはり支え続けるのだと感じました。

 また先生は、幼いころに出会った「童画」について話してくださいました。「初期の童画は子どもに語りかけるものだったが、最近の絵本は、見る絵ばかり、読む絵が少なくなってきている」と言われました。

 絵で語りかけることのできる作家として赤羽末吉、堀内誠一、長新太各氏の名前を挙げられました。

 続いて「現代の子ども達はテレビ、機械語の中で育っている」と指摘され、家庭から言葉がなくなってしまったことについて話をされました。「そのような環境の中では心が通じず、人の話を聞く力が育たない」の言葉に私たち現代人が忘れてしまった目と目を合わせ、心を通わす「話す・聞く体験」を家庭で取り戻すことが、現代とりわけ必要だと感じました。

 そこで先生は、「子育て中、子守唄、わらべうたは大切です」とご自身の子守唄の体験を話してくださいました。先生は子守唄を、教わったり、歌ったりしてもらった記憶がないのに、父親になったある日、むずがるお子さんを抱っこしたら無意識に子守唄を歌っていたそうです。「ねんねんころ〜り〜よ〜、おこ〜ろ〜り〜よ〜」と。しかも正確に。「子守唄、わらべうたは、声を通して歌っている人の気持ちが伝わる、言葉として伝わる」の言葉に人間の生の声の力を感じることができました。

 そして家庭での言葉の体験が言葉を豊かにし、言葉の喜び、人間の喜びにつながっていくのではないかと考えさせられました。

 次に北欧民話『三びきのやぎのがらがらどん』(マーシャ・ブラウン / え 、せたていじ / やく 、福音館書店)を紹介され日本語の訳が大変すばらしく、アメリカよりも日本のほうに人気があること。そして歌人・俵万智さんが3歳のとき、この本が大好きで毎晩読み聞かせをしてもらっていたら文字が読めないのに、一言一句間違わずに覚えていたことを紹介され、俵さんのことをこのような言葉で表現されました。「俵さんは3歳のときから言葉のよろこびを知っていた。3歳で詩人だった」と。

 そして先生は「もっと親子で自然体験を楽しんでほしい。映像の世界では伝わらない自然での実体験が言葉を感じる力になる。絵本をより楽しめる」と言われました。

 最後に「人間にとって大切ことは目に見えない、愛も、言葉も、命も、時間も、人情も、こころも……。しかし感じて思い描くことができる」と力強くおっしゃいました。そして「わたしは星の王子様(サン=テクジュペリ作)が見えます。長いこと付き合っています。それは小さい頃の絵本体験があるからです」と話してくださいました。最後まで穏やかで温かいお話に受講生の皆さんも聞き入っておられました。講演後は先生の著書にサインを頂く長い列が会場にできました。

 昼食をはさみ午後からは、藤井勇市専任講師より課題レポートの質問に対しての回答がありました。続けて「絵本講師の姿勢」「絵本選び」「ボランティアについて」のお話がありました。

 先生は「人が推薦した本が必ずしも自分の心を打つとは限らない。人の薦める本を安易に読むことは子どもに対して失礼・傲慢なことである」と言われました。

そして、自分の好きな絵本、感動した絵本、誰かと読みたい絵本を読むことが最適であり必要であること、自分の生き方が言葉と共に聞き手に伝わること、そして、これがない読み方は伝わらないと話されました。

 そして、私達絵本講師は聞いてくださる方がたに話そうとするコンテンツ(内容)が、本当にいいことかどうか、それを点検する自分がいるか? それが 聞いてくださるかたへの敬意と畏怖である、といわれました。絵本講師の責任の重さを痛感しました。

 そして『絵本フォーラム』(第78号)に掲載された、京都大学原子炉実験所・助教、小出裕章先生へのインタビュー記事についての話がありました。

 その後約2時間、9グループに分かれ、グループワークを行いました。絵本を持参され、読み合うグループの声が方々から聞こえてきて、時間いっぱい学び、交流を深める姿がみられました。

 次回は10月29日、季節は実りの秋を迎えます。私たちの学びも実り多き日々でありますようにと願っています。次回、皆さまにお会いできる日を楽しみにしております。

 ありがとうございました。 (はやし・まゆみ)

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