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報告者
芦屋7期生
澤井 彩
第5編 〜絵本講座をやってみよう〜
2011年12月10日(土) ラポルテホール
主催:NPO法人「絵本で子育て」センター  共催:ほるぷフォーラム社
協賛:岩崎書店・偕成社・金の星社・こぐま社・鈴木出版・童心社・福音館書店・ほるぷ出版・理論社

 第8期「絵本講師・養成講座」(芦屋会場)第5編は12月10日、例年より遅めに色づいた六甲の山並みを背にした芦屋市ラポルテホールで開催されました。

午前の部は、本編の講師片岡直樹先生(川崎医科大学名誉教授、Kids21子育て研究所所長)の講演でした。演題は「テレビ、ビデオが子どもの心を破壊している」です。
会場には先生の著書も並び、講演前に購入される方も多く、関心の高さがうかがえました。
先生は冒頭で「私は“発達障害”とは言いません」と述べられました。先生のもとには発達障害と診断された子どもとその保護者の方々が全国から訪れます。近年は100人に1人、50人に1人ともいわれる割合で増加の一途をたどる現状を、先生は後天的要因(環境と育て方)によるものとして捉えられ「新しいタイプの言葉遅れ」と表現されています。
そして永年の臨床医としての経験をもとに「私が体験したこと、子どもと母親から得た知見のみをお話しします」と数々の事例を映像とともに解説してくださいました。


「生まれながらにして生きる術を持つその他の哺乳動物に対して、人間は赤ちゃんのそばに人間(大人)がいないと人間にはなれない。生れてから2歳半までは特に重要で身近な大人との応答環境がないと、セオリー オブ マインド=<心の理論>は育たない。その応答環境を阻害するものの代表がテレビやビデオ、電子おもちゃなどの“音”“光”であり、その 一方的なかかわりのなかでは赤ちゃんの五感の成育が妨げられ、人間を見る力がなくなってしまう」と話されました。
知らず知らずのうちに大人が提供している知育玩具にも落とし穴があり、早い時期から数字や文字、図形を覚えさせることは危険であると、現下の早期教育に警鐘を鳴らされておられます。
私自身の子育てを振り返っても思い当たる節があり、反省すること頻りです。
そして、「絵本の読み聞かせが、なぜ子どもの五感の生育に良いのか。それはマザーリーズ(お母さんの姿、顔、声の表情)が耳に入るから。言葉ではありません」と絵本の読み聞かせの持つ可能性にも触れられ、受講生の皆さんも、私たち聴講生も絵本の“ちから”を再確認することができました。 

最後に先生は「今朝、私がいちばんにしたこと。それはテレビのスイッチを入れることでした。大人にとってそれは空気と同じようなもの。しかし赤ちゃんにとって、“光”と“音”はすべてを支配するもの。そこが全然違うということをお伝えしたかった」とメッセージを残されました。
ひとりの母親として、そして絵本講師として、このデジタル社会をどのように生きていくか、何を伝えていくか、貴重な学びの機会となりました。

続いて池田加津子さん(芦屋2期生)より、「はばたきの会」の説明と賛助会員や特別聴講生の案内、各種の活動や支部の紹介がありました。

昼食休憩をはさみ、午後は当「養成講座」の専任講師藤井勇市先生より「子ども(たち)に絵本を届ける前に……」と題してお話がありました。
「半世紀に亘る『小さな物語』(自分と家族を中心にした考え、小さなコミュニティ)の子育てのなかで失ったものはあまりに多い。3.11を機に私たちはもう一度『大きな物語』(自分以外の人や社会をたいせつに考える)を紡ぎはじめる必要があるのではないでしょうか」と述べられました。
また、絵本講座・講演を行う時は、「読み聞かせには、その人自身の身体性が随伴する日常性こそが重要です」「子どもたちや聴講者に対して、『人間性への畏怖』、『知性に対する敬意』が絵本講師には必要な属性です」と。
私たち絵本講師としての基本の心構えともいえるお話に「相手に寄り添う」ことのたいせつさを改めて胸に刻むことができました。
修了リポート作成についての説明では、「『祖述=そじゅつ』(先達の知識、著作)の引用に加え、出来るだけ身近な具体例を話すと説得力が増し分かりやすい」、というアドバイスに受講生の皆さんはペンを走らせておられました。


その後の2時間にわたるグループワークでは、修了リポートに向けての不安や疑問について話し合われたり、それぞれの思いについて伝え合われたりしているうちに講座作成の道筋が見えてきたようでした。グループワークの意義を改めて実感した時間でした。

また今回、嬉しいサプライズもありました。去る10月13日にご逝去された中川正文先生(児童文学者、京都女子大名誉教授、NPO法人『絵本で子育て』センター顧問)が、18歳の時に執筆されたという『青い林檎』(百華苑)の販売がありました。書店では手に入らない先生ご自身の蔵書で、奥様の諄子さまが特別提供してくださった大変貴重な書籍です。若き日の中川先生にお会いできるようで拝読するのが楽しみです。

次回は2月25日、いよいよ最終編です。世界にひとつだけの「絵本講座」を作成され、修了されるその日。より眩しく輝かれる受講生の皆さんにお目にかかれることを、心より楽しみにしています。(さわい・あや)

★芦屋会場リポート 第1編/第2編/第3編/第4編/第5編/第6編
★東京会場リポート 第1編/第2編/第3編/第4編/第5編/第6編

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