第9期「絵本講師・養成講座」（芦屋会場）第5編が12月15日（土）、ラポルテホール・特設会場で開催されました。
寒気日増しにつのり、冷え込みの厳しい寒さが続いていましたが、あいにくの雨ではあるものの幾分暖かい1日でした。今編は実践課程として、森ゆり子理事長による絵本講座「絵本を読んであげましょう」から始まりました。私たち受講生を保育所の保護者と想定して実演が行われました。

初めに、普段は絵本を読んでもらうことの少ない私たちに、『おこだでませんように』を読んでくださいました。学校の先生や母親に怒られてばかりいる男の子のお話です。やさしく語りかけるその声を聴いていると、子どもの気持ちを想い、寄り添っていることにふと気づきます。理屈や説教ではなく、絵本の読み聞かせの真髄が心の中にしみこむように入っていきます。家へ帰ったら子どもをきゅっと抱きしめてあげたい、と思われた受講生の方もいらっしゃったのではないでしょうか。

次に、世界中で愛され、圧倒的な人気を誇っている絵本の一冊『ちびゴリラのちびちび』（ルース･ボーンスタイン／さく、いわたみみ／やく、ほるぷ出版）では、だいすきだよ、というフレーズがたくさん盛り込まれています。だいすきだよ、と何度も語りかけられているようで、何度読んでも、何度読んでもらっても、あたたかい気持ちになる絵本です。読んでもらうことの心地よさやあたたかさに気持ちがやさしく穏やかになるのを覚えました。

1967年に出版され世代を超えて多くの人に読み継がれている『いない いない ばあ』(松谷みよ子　あかちゃんの本、瀬川康男/え、 童心社)では、「別離と再会」、「光と闇」のように子どもの感情が対になって育っていくことを話されました。「不快と快」、「不安と安心」、「恐れと平穏」という感情を行き来しながら子どもの情緒は安定します。つらいことを体験するだけでは愛の感情は育ちません。子どもに愛している、大切に思っているという想いが伝わってこそ情緒が安定し、愛の感情が育ちますというお話が印象的でした。

『いいこってどんなこ』(ジーン・モデシット/文、ロビン・スポワート/絵、もき かずこ/訳、 冨山房) では、自分をまるごと受けいれてほしいと願う子どもの気持ちに寄り添いましょうとエピソードを交えながらわかりやすく話してくださいました。

最後は『さっちゃんのまほうのて』（たばたせいいち、先天性四肢障害児父母の会、のべあきこ、しざわさよこ／共同制作、偕成社）を目を閉じて聴きました。理事長のやさしく語りかける声が響き渡り、受講生の皆さんは目頭が熱くなり涙がこぼれ落ちそうになるのをこらえながら聴き入っている様子でした。
現在の子どもをとりまく環境には「いろんなジャンルの絵本を読み、心を揺さぶるほどの様々な感情を体験し、心の基礎体力を育てていく。そのために絵本をしっかり吟味すること。そして親子で楽しみながらいろんな共有体験を積み重ねることが大切である」と読み聞かせの必要性を話され午前の部は終了となりました。
今回、実演講座を再度聴講する機会に恵まれました。温かくやさしい声に耳を傾けていると心に響くものがたくさんあります。心が揺さぶられます。親の愛情を子どもの心へ届けてください、という心のこもった声が絵本の読み聞かせや講座を通して、私たち受講生ひとりひとりの胸深くにすっと入っていったことと思います。

午後からは、すべてグループワークの時間となりました。はじめに、藤井専任講師より課題リポートの作成についての説明がありました。聴いていただく方に敬意を表し、何よりも誠実であることを念頭において作成することが大切であるとおっしゃっていました。グループワークでは、これまで学んできたことや午前の実演をもとに、講座の組み立て方や取り入れる絵本のことなど、課題リポートについて熱心に意見交換する姿が見られました。また、これまでの講座の感想、子育てやご自身の体験など、さまざまな内容を語り合いました。

次回は、2013年2月 23 日（土）に修了式が行われます。素晴らしい絵本講師の方々が第一歩を力強く踏み出します。みなさまの晴れやかなお姿にお会いできることを楽しみしています。（たにぐち・なおみ）