第15期絵本講師養成講座

報告者
おかべ まさこ
芦屋2期
岡部 雅子
第4編 〜 絵本講座の組み立て方 〜
2018年11月17日(土)飯田橋レインボーホール
主催:NPO法人「絵本で子育て」センター
協賛:アリス館・岩崎書店・偕成社・金の星社・こぐま社・鈴木出版・童心社・福音館書店

第15期「絵本講師・養成講座」

中村 利奈

 小春日和となった11月17日、第15期「絵本講師・養成講座」東京会場第4編が飯田橋レインボービルにて開催されました。

 午前の部では、故 中川正文先生のご講演「絵本・わたしの旅立ち」をDVDで視聴しました。大人が子どもに絵本を読むことは、人間が人間に文化を届けること。一冊の絵本を仲立ちにして経験を分かち合うこと。受け取り方は違っても、読後には共に成長している。そういう関係が、大人と子どもと絵本の基本的な関係だと中川先生はおっしゃいます。ふと、幼い我が子に良い絵本を読んで育てたいと思い悩みながら受講していた頃、先生のお話に、経験を共有することで子どもだけでなく親の私も成長できるんだと心が軽くなったことを思い出しました。また、一度見て理解できる程度の内容を一方通行で流すのがTVで、一度読んだだけでは故 中川正文氏理解できない内容を繰り返し読むのが絵本だと、両者の違いを示し、大人が何度読んでも読み飽きないものを選ぶことが大事との選書のポイントを教えてくださいました。そして、本との付き合いは人との付き合いに似ていて、一度会っただけでは良さがわからず、また、よい本とは長い付き合いになるので、見本市の図書館で選び、読み返したい本は買って手元に置くという付き合い方を提案されました。愛蔵の豆本を披露しながら、子どもには一番ステキな絵を選ぶようにと、お茶目に語る先生の笑顔が印象的でした。最後に、無駄と思われることを繰り返すのが人生で、そこから真実や美しさを見出すことがあり、そこに価値があると、絵本『すみれ島』(今西祐行/文、松永禎郎/絵、偕成社)を読んでくださいました。「優しさとは、命を大事にするとは、どういうことか」という先生の問いを、受講生たちはしっかりと受け止めたようでした。

藤井 勇市 休憩を挟み、午後は、藤井勇市専任講師の「子どもに絵本を届ける大人の心構え」と題した講演から始まりました。危うい社会の到来、故中川正文先生の思い出、「絵本講師」としての心構えの三部立てです。第一声に、「政治に無関心でいられたとしても、政治と無関係ではいられない」と、消費税増税や原発再稼働、日米関係など、平成という時代に私たちが無意識に選択してきたことへの警鐘を鳴らされました。繰り返される政治の不誠実さに慣れ過ぎて諦めてしまっては、子どもたちに顔向けできないのです。静かな語り口だからこそ心に届くお話でした。故中川先生との思い出では、家庭での言葉の復活が豊かな人間性の礎となるという信念とそれにおける絵本の可能性を探求したいという熱い思いを先生にぶつけたセンター立ち上げ時のエピソードとともに、慈愛とユーモア池田 加津子にあふれる先生のお人柄にも触れられました。心構えのお話からは、今の子どもたちが置かれた現状と子ども時代に必要なことのギャップを埋めるために何ができるのか。そんな本質的な問いを持つことで、「絵本講師」としての第一歩が始まるのではないかと感じ、気持ちが引き締まりました。

 グループワークでは、今回の講演で一編からの内容が全て繋がったという感想が聞かれました。どのグループも回を重ねるごとに学びと親交を深めている様子でした。

 

 

(おかべ・まさこ) おかべ まさこ

 


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