私の絵本体験記

「絵本フォーラム」103号(2015年11.10)より

思春期の子どもたちと絵本

東條 真由美(大阪府和泉市)

 「うちは変わってる」「遅れてる」。携帯やゲーム機を持たせなかった中学時代の息子に言われた言葉です。バトルが絶えず、絵本をたくさん読んできたのになぁと無力感を覚える事もありましたが、その後、嬉しい瞬間もたくさんやって来たのでした。

  小さい頃から吃音のあった私は、幼い子どもたちへの言葉がけに不安を抱えながらも、読むことで言葉を届けられる絵本にどれだけ助けてもらった事でしょう。子どもたちはいつしか大きくなり、思春期へ突入していきます。

 一緒にピーナッツを食べていた中学生の娘が突然ひと言「ピーナッツくんは固い」。瞬時に『そらまめくんのベッド』が浮かんだ私は「さやえんどうさんは薄い」と返し、無言で頷きあいました。

思春期の子どもたちと絵本 東條真由美 高校生の息子が綺麗なアフリカ色のボードを見た時「こんな色の絵本、昔読んでもらわんかった?」。エチオピア民話の『もどってきたガバタバン』を、何年ぶりかで一緒に読み返しました。愛情をこめた自分の声や絵本の絵が、今も子どもたちの中で生きているとわかる、何とも幸せな瞬間です。

  子どもが思春期に入ると、会話が減って反抗も強くなり、親子の関係が切れたような不安を感じる事もあります。そんな時、昔一緒に読んだ絵本の言葉や絵がふと浮かび、当時の温かい記憶を共に思い出す事で、根っこではお互いにちゃんと繋がっているという安心感を持てるのかもしれません。そしてその記憶は、これからも子どもたちの中で、生きる力にもなっていくのではと確信しています。
(とうじょう まゆみ)


前へ次へ