読売新聞

「読売新聞」 
2012年08月05日(日)掲載

親子で読む「平和」絵本

   シンプルに心へ直接メッセージ

 戦後67年目の夏を迎えた。子どもたちに戦争のことを語り継ぐために、親子で読める絵本を探した。大人も心打たれる作品が多い。(高梨忍)

 「おしまいは、こんなのを読んで見ましょうね」福岡市西区の徳永子どもプラザで、乳幼児に絵本の読み聞かせをしていた松本直美さん(51)が、バックから最後の1冊を取り出した。「へいわって どんなこと?」(浜田桂子・作、童心社、1575円)という人気の絵本だ。日中韓の絵本作家がそれぞれ平和の大切さを伝える物語を創作し、各国語で刊行しているシリーズの第1巻で、日本だけでも8万7000部が発行された。
 いろいろな国籍の子どもたちが1つの大きな皿を囲んでご飯を食べたり、お月様の下で寝たりする場面を通して、穏やかに暮らせることの幸せを描いている。
 「おなかが すいたら だれでも ごはんが たべられる」「あさまで ぐっすり ねむれる」。松本さんはゆっくりとページをめくり、よく通る声で語りかけるように読む。言葉が分からないはずの生後7か月の赤ちゃんがじっと見つめ、遠くから興味深げにのぞき込む子どももいた。
 「シンプルな言葉と柔らかいタッチの絵が、心に直接、温かいメッセージを届けてくれる。お母さんの声ならなお、心地よく響きますよ」。松本さんは、NPO法人「『絵本で子育て』センター」(兵庫県芦屋市)の理事で、福岡市を拠点に絵本の普及活動をしている。

 読み聞かせのこつを教える大人向けの講座で必ず教材に使うのは、特攻隊員と子どもたちの交流を描いた絵本「すみれ島」(今西佑行・文、松永禎郎・絵、偕成社、1470円)だ。子どもたちが届けたスミレの花が、特攻機とともに南の島に落ち、花畑になるという悲しい物語だが、パステル調の挿絵が美しい。

  「誰の心にも届く名作。幅広い世代に読んでほしい」

 平和をテーマにした作品は、内容や表情が重い場合も多い。子どもがむずがったり、気が散ったりする時は無理せず、読むのをやめた方がいいそうだ。「絵本の言葉の響きや絵のイメージは長く心にとどまるもの。その時は理解できなくても、将来、戦争と平和について考える糧となるはず」

 穏やかな声でゆっくりと、平和をテーマに絵本を読む松本さんと、真剣な表情で聞き入る親子連れ(福岡市西区)

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